著者
鈴木 康文 丸山 仁司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.A0901, 2004

【目的】<BR> 筋肉系は持続的な運動負荷によって、筋細胞と関節や筋の結合組織の発達が促進される。その結果、筋の太さ、横断面積が増大し、最大筋力の増加をもたらす。そして、筋肉内毛細血管の増加をきたさせ、筋肉に対する循環血液量を増大させる。このことから、最大筋力が高ければ筋肉内毛細血管数は多く血液供給能力が高いと推定でき、自転車エルゴメーターのペダル踏み運動などで漸増負荷運動を行なわせると、最大筋力が高いほど相対心拍数における仕事率が大きいと考えられる。そこで、本研究では自転車エルゴメーターを用いた漸増負荷運動を行い、目標心拍数(心拍数の増加率50%)に至ったときの作業強度(PWC <SUB>HR50%</SUB>)を測定し、PWC <SUB>HR50%</SUB>に影響を及ぼしている因子について検討した。<BR>【対象と方法】<BR> 対象は地域情報誌にて体力測定の参加を募集し、体力測定によって悪化が予想される内科的・整形外科的問題がないと医師に判断された60歳以上の中高齢者11名(平均年齢71.9±4.2歳)とした。PWC <SUB>HR50%</SUB>と下肢筋力、酸素運搬能力との関係を検討するために、PWC <SUB>HR50%</SUB>と膝伸筋群の60deg/secにおける最大トルク、赤血球数およびヘモグロビン量とについてPearsonの相関係数を算出した。さらに、PWC <SUB>HR50%</SUB>に関与している因子の影響力を検討するために、目的変数をPWC <SUB>HR50%</SUB>とし、年齢、体重、身長、60deg/secにおける最大トルク、赤血球数、Hb量の6変数を説明変数として、変数増加法による重回帰分析を行った。<BR>【結果および考察】<BR> PWC <SUB>HR50%</SUB>と60deg/secにおける最大トルクとの間に有意な相関(r=0.76)がみられ、60deg/secにおける最大トルクが大きいほど、PWC <SUB>HR50%</SUB>が高くなる傾向を示した。PWC <SUB>HR50%</SUB>と赤血球数、Hb量とには有意な相関が認められなかった。また、重回帰分析の結果、negative変数として年齢、positive変数として60deg/secにおける最大トルク値が採択され、重相関係数は0.81(p&lt;0.05)であった。また、この2つの説明変数のうち、どちらがPWC <SUB>HR50%</SUB>により大きな影響を与えているのかを標準偏回帰係数の絶対値で比較すると、年齢(β=0.295)より60deg/secにおける最大トルク値(β=0.795)のほうが大きく、PWC <SUB>HR50%</SUB>に及ぼす影響の強さは、年齢より60deg/secにおける最大トルク値のほうが大きいことが示された。<BR>本研究からPWC <SUB>HR50%</SUB>と60deg/secにおける最大トルク値との関連性が強いことが明らかになり、下肢の最大筋力を推定するのにPWC <SUB>HR50%</SUB>の測定が有効である可能性が示された。

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