著者
吉川 幸次郎 丸山 仁司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P3413, 2009

【目的】内腹斜筋の上部線維と中部線維の比較<BR>体幹の安定性を維持するために体幹筋が注目されている.内腹斜筋は体幹屈曲、側屈、<BR>回旋させる主導筋の働きが中心である.しかし、一方では腹圧の調整および胸腰筋膜に働きかけることで体幹の安定化させる役割があるとされている.近年内腹斜筋が線維の方向や線維長、筋厚の観点から上中下部に分類できることが主張されており、機能的にも相違があるといわれてきている.今回姿勢の変化に伴い上部線維と中部線維とで姿勢保持のための活動の相違を検証した.<BR>【方法】健常成人男性14名(平均年齢22.7±2.96歳 身長171.5±3.95cm 体重65.7±5.31kg).姿勢を背臥位→立位→爪先立ち位と姿勢を変える.併せて超音波画像診断装置(東芝PV8000)で内腹斜筋を撮像する.撮像部位は上部線維(中腋窩線と第11肋骨が交わった付近)と中部線維(胸郭と腸骨稜の中間と中腋窩線の交わった付近)である.各姿勢につき30秒撮像する.撮像した映像を画像編集ソフト(WinDVD)で静止画像化し画像解析ソフト(image J 1.41)で内腹斜筋の筋厚を測定する.呼吸筋としての活動を最小限にするため最大吸気の時点で静止画像化する.内腹斜筋の上部線維と中部線維の筋厚を比較しその活動の違いを考察する.比較方法は背臥位の筋厚を基準にした立位と爪先立ち位の筋厚の増加率を計算し、上部線維と中部線維とで比較する.検定方法としてt検定を用いた.<BR>なお、今回の実験を行うに際しヘルシンキ宣言を参考に事前に被験者に内容を説明し理解してもらい同意を得て実験を行った.<BR>【結果】各肢位における平均筋厚は以下の通りであった.上部線維(背臥位→立位→爪先立ち位の順)41.4±6.0mm、48.2±9.5mm、52.1±10.2mm.中部線維は51.9±9.0mm、52.6±10.5mm、54.4±11.0mmであった.背臥位の筋厚を基準にした筋厚の平均増加率は、上部線維では117%、126%であり、中部線維は101%、105パーセントと上部線維が活発な活動を示していることが示唆された.立位、爪先立ち位ともに上部線維と中部線維とでは有意な差が生じた.<BR>【考察】先行研究では、内腹斜筋の上部線維と中部線維とではいずれも線維の走行が内側上方に向かっていて機能的にも類似しているとするものがある.しかし、文献によると、内腹斜筋の各線維付着部に着目した場合、上部線維が肋軟骨に付着するのに対して、腹直筋の腱膜に付着しているとしている.そのため、上部線維が胸郭を固定することで姿勢を安定させ散るのに対して、中部線維は腹圧を高めること出姿勢を安定させているという違いがあるのではと考える.<BR>【まとめ】今回の研究で内腹斜筋上部線維と中部線維の活動に違いがありうることが示唆された.

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