著者
若田 真 山田 純生 河野 裕治
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.D3P2494-D3P2494, 2009

【目的】<BR>有疾患者や高齢者において上肢運動は下肢運動に比べ呼吸困難感(DOB)が強い.これまでDOBに上肢運動における胸郭と腹部の非同期呼吸パターンが関連することは明らかにされているが、上肢運動における呼吸数依存の換気量増加や一回換気フローボリューム曲線の位相変化など、その他の要因との関連は不明である.呼吸数依存性換気量増大は、一回換気時間の短縮による呼気速度の増大や、位相変化が生じた場合は各肺気量位での呼気気流の予備量が異なってくるとともに、呼気気流制限(EFL)の誘因になると考えられる.以上より、本研究は上肢と下肢の運動様式の違いがEFLならびに位相変化の発生に関連するか否かを検討することを目的とした.<BR>【方法】<BR>喫煙歴、肺疾患歴のない健常女性10名(年齢21.9±1.4歳,身長:157.6±7.0cm,体重:49.4±5.7kg)を対象とした.まず、上肢運動はアームエルゴメータ、下肢運動は自転車エルゴメータを用いて心肺運動負荷試験を行い、最高仕事量の80%(80%peak watts)を上肢運動の強度とした.下肢運動の強度は、上肢運動の定常負荷時の分時換気量(VE)と等しくなる負荷量とした.定常負荷試験は5分間の安静の後、0wattsのwarm-upを3分間行い6分間の定常負荷運動を行うものとし、負荷開始4分目と6分目に呼気ガスマスク装着のままフローボリューム曲線を測定した.運動中は呼気ガス指標ならびに心拍数を連続的にモニターし、1分間隔で呼吸困難感と上肢・下肢疲労感(修正Borg指数)を測定した.以上より、運動4分目と6分目の各指標を比較し、また運動時の最大フローボリューム曲線と一回換気フローボリューム曲線との位置関係より、EFLの発生の有無ならびに位相変化を評価した.本研究は、名古屋大学医学部倫理委員会保健学部会で承認を得た (承認番号8-514) .<BR>【結果】<BR>上肢運動と下肢運動における定常運動負荷開始後4分目と6分目のVEには有意差はなかった.上肢運動における換気量の増加は下肢運動と比較して、一回換気量の増大は少なく呼吸数増加によるものであった.しかし、運動時一回換気フローボリューム曲線による評価ではEFLの発生は確認されなかった.また、上肢運動では一回換気量増加に伴う吸気終末肺気量の増加量が下肢運動と比較して有意に低下しており、下肢運動時の一回換気フローボリューム曲線と比較して右方偏位していることが観察された.<BR>【まとめ】<BR>本研究では、EFLの発生は確認されなかったが、上肢運動は下肢運動と比較して、呼吸数優位な換気増加パターンであることが示されている.また、上肢運動では一回換気フローボリューム曲線が右方偏位することが確認され、換気増加パターンとあわせて換気量増加に伴いEFLを起こしやすいことが示唆された.

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