著者
牛山 直子 田中 美和 百瀬 公人 若田 真実
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0539, 2008

【目的】平成18年4月の診療報酬改正により運動器疾患の治療期間は150日に制限された。Diercksらは凍結肩の回復は2年後でも63%と報告している。しかし、治療内容や治療期間、可動域制限の影響は十分に述べられていない。他の研究報告も治療期間、内容などの検討は不十分である。今回の研究の目的は肩関節周囲炎患者の治療期間と初期評価時屈曲角度との関係を明らかにすることである。<BR>【方法】<BR>対象は平成14年4月から平成18年3月までに当院整形外科を受診し、肩関節周囲炎と診断され理学療法開始し、平成19年11月までに終了となった患者51名。障害肩は右26肩、左25肩で、両側の診断を受けた2名は、可動域制限の重度な肩をデータとした。性別は男性19名、女性32名、平均年齢は61.5±13.1歳であった。理学療法は、リラクゼーションを目的にしたマッサージと痛みを出さない範囲での肩関節可動域訓練、姿勢調整などを行い、症状改善と患者の同意をもって終了とした。調査項目はカルテより後方視的に、治療期間(理学療法開始~終了の日数)と初期評価時屈曲角度(角度)とした。患者を角度別に0~80度の重度拘縮群(重度群)、81~120度の中等度拘縮群(中等度群)、121~150度の軽度拘縮群(軽度群)、151度以上の拘縮無し群(無し群)の4群に分け治療期間について比較した。統計は群間の比較として分散分析を用い、全データの治療日数と角度との関係について相関係数を求めた。有意水準は危険率0.05とした。<BR>【結果】<BR>4群の内訳は、重度群3例、中等度群15例、軽度群が21例、無し群が12例であった。平均治療期間は重度群291±180日、中等度群382±129日、軽度群243±193日、無し群173±212日であり、4群間に有意差は無かった。治療期間と角度との関係は、相関係数-0.274、危険率は0.052で有意な相関が認められなかった。群別に治療期間をまとめると5ヵ月以内に終了した割合は、重度群0%、中等度群20%、軽度群43%、無し群73%であった。6ヵ月から12ヵ月以内に終了した割合は重度群67%、中等度群40%、軽度群38%、無し群9%であった。1年以上の割合は重度群33%、中等度群40%、軽度群19%、無し群18%であった。2年以内に99%が終了した。<BR>【考察】<BR>初期評価時の屈曲角度と治療期間には有意な相関が無く、4群間にも有意差が無かった。しかし可動域制限が重度だと治療期間が長い傾向にあることがわかった。可動域制限が軽度でも治療期間が1年以上だった割合が約2割あり、屈曲角度の他にも治療期間に影響を与える因子があると示唆される。したがって治療が長期化する要因を追求する研究が今後必要だと考えられる。<BR>【まとめ】<BR>51名の肩関節周囲炎患者の治療期間と初期評価時屈曲角度との関係を重症度別に調査した。治療期間と角度の関係には統計的に有意な差が認められなかった。可動域制限が治療期間に影響を与えることが示唆されたが、他の要因についても検討が必要である。
著者
若田 真 山田 純生 河野 裕治
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.D3P2494-D3P2494, 2009

【目的】<BR>有疾患者や高齢者において上肢運動は下肢運動に比べ呼吸困難感(DOB)が強い.これまでDOBに上肢運動における胸郭と腹部の非同期呼吸パターンが関連することは明らかにされているが、上肢運動における呼吸数依存の換気量増加や一回換気フローボリューム曲線の位相変化など、その他の要因との関連は不明である.呼吸数依存性換気量増大は、一回換気時間の短縮による呼気速度の増大や、位相変化が生じた場合は各肺気量位での呼気気流の予備量が異なってくるとともに、呼気気流制限(EFL)の誘因になると考えられる.以上より、本研究は上肢と下肢の運動様式の違いがEFLならびに位相変化の発生に関連するか否かを検討することを目的とした.<BR>【方法】<BR>喫煙歴、肺疾患歴のない健常女性10名(年齢21.9±1.4歳,身長:157.6±7.0cm,体重:49.4±5.7kg)を対象とした.まず、上肢運動はアームエルゴメータ、下肢運動は自転車エルゴメータを用いて心肺運動負荷試験を行い、最高仕事量の80%(80%peak watts)を上肢運動の強度とした.下肢運動の強度は、上肢運動の定常負荷時の分時換気量(VE)と等しくなる負荷量とした.定常負荷試験は5分間の安静の後、0wattsのwarm-upを3分間行い6分間の定常負荷運動を行うものとし、負荷開始4分目と6分目に呼気ガスマスク装着のままフローボリューム曲線を測定した.運動中は呼気ガス指標ならびに心拍数を連続的にモニターし、1分間隔で呼吸困難感と上肢・下肢疲労感(修正Borg指数)を測定した.以上より、運動4分目と6分目の各指標を比較し、また運動時の最大フローボリューム曲線と一回換気フローボリューム曲線との位置関係より、EFLの発生の有無ならびに位相変化を評価した.本研究は、名古屋大学医学部倫理委員会保健学部会で承認を得た (承認番号8-514) .<BR>【結果】<BR>上肢運動と下肢運動における定常運動負荷開始後4分目と6分目のVEには有意差はなかった.上肢運動における換気量の増加は下肢運動と比較して、一回換気量の増大は少なく呼吸数増加によるものであった.しかし、運動時一回換気フローボリューム曲線による評価ではEFLの発生は確認されなかった.また、上肢運動では一回換気量増加に伴う吸気終末肺気量の増加量が下肢運動と比較して有意に低下しており、下肢運動時の一回換気フローボリューム曲線と比較して右方偏位していることが観察された.<BR>【まとめ】<BR>本研究では、EFLの発生は確認されなかったが、上肢運動は下肢運動と比較して、呼吸数優位な換気増加パターンであることが示されている.また、上肢運動では一回換気フローボリューム曲線が右方偏位することが確認され、換気増加パターンとあわせて換気量増加に伴いEFLを起こしやすいことが示唆された.