著者
永井 良治 金子 秀雄 黒澤 和生
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48102011-48102011, 2013

【はじめに】本学科は2010年より大学関連施設においてクリニカルクラ-クシップ(以下:CCS)を導入している。CCSを導入するにあたり数年前より関連施設の臨床実習指導者(以下:SV)と技術習得のために重要項目を挙げ「見学・模倣・実施」のチェックリストを作成した。CCS導入は、学生がある段階で解決困難な問題が生じるとそこから先には進めなくなり、評価段階だけとなることや、急性期病院では評価のみとなり、理学療法を「実施」する経験が非常にすくない。業務終了後に学生指導に時間がかかり思うように学習効果向上しないことなどが挙げられCCSを導入した。認知領域偏重の指導ではなく、精神運動領域を中心にチェックリストを作成した。チェックリストは検査測定40項目、治療技術40項目の合計80項目からなる。臨床実習は8週間で週1回は教員による学生指導を実施している。今回はSVに対してCCSに関するアンケ-ト調査を実施し現状と問題点ついて報告する。【方法】臨床経験4年目(平均7.8±3.3年)以上の41名を対象とした。臨床経験4~9年目30名(平均6.2±1.9年)、10年目以上11名(平均12.1±2.3年)であった。アンケ-ト内容は1)、従来の実習形態より経験値は高まるか。2)、能動的な学習(積極性)は従来の実習形態と比べ学生の行動変化が感じられるか。3)、技術領域の習得は従来の実習形態より高まるか。4)、患者の不安、リスク、また指導者の不安は軽減しているか。5)、「見学」・「模倣」・「実施」のプロセスから学生の理解度を把握できるか。6)、ケースノートとディスカションを通して学生の理解度が把握できるか。7)、SVと一緒に診療参加することで理学療法全体に関する理解度は高まるか。8)、「見学」・「模倣」・「実施」を繰り返すことで問題解決能力は向上しているか。9)、SVの学生指導の負担は軽減しているか。10)、CCSを支持するかの10項目である。各項目の回答は「そう思わない」「どちらでも言えない」「そう思う」とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には、本研究の目的と方法を文章と口頭にて十分に説明し同意を得た。【結果】CCSの支持は臨床経験10年目以上では72.7%であり、全体では48.8%であった。 10項目において「そう思う」は、1) 53.6%、2) 26.8%、3) 58.5%、4) 39.0%、5) 36.6%、6) 34.1%、7) 56.1%、8) 26.8%、9) 56.1%、10) 48.8%であった。「そう思わない」が「そう思う」より割合が大きい項目は2) 能動的な学習(積極性)は従来の実習形態と比べ学生の行動変化が感じられるか。 6) ケースノートとディスカションを通して学生の理解度が把握できるか。8) 「見学」・「模倣」・「実施」を繰り返すことで、問題解決能力は向上しているか。 以上の3項目であった。臨床経験10年目以上では、1) 100%、2) 36.4%、3) 81.8%、4) 63.7%、5) 72.7%、6) 54.6%、7) 54.6%、8) 27.3%、9) 72.7%、10) 72.7%であった。【考察】CCSの臨床実習形態に変更して2年経過した。現在、当学科では約半数学生が関連施設でCCSの実習と外部施設での実習を経験する。指導体制は各関連施設の方針に従っている。作成したチェックリストの「実施」になる項目数はすべての関連施設で平均75%以上は到達できるものである。教員は「見学」・「模倣」・「実施」のチェック状況とその内容の理解の把握と指導をしている。CCS導入の目的であった経験値の向上、技術領域の習得、理学療法全体に関する理解の向上は「そう思う」の割合が高く有効な臨床実習に進みつつある。また業務時間外の指導がないことでSVの負担軽減にも繫がっている。CCSはSVの経験年数により、捉え方は異なりSVと連携して学生指導方法についてさらに検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】当学科では関連施設においてCCSを実施している。協会の理学療法教育ガイドラインでは、実習形態は学生が主体となって患者を担当する形態を排除し,クリニカル・クラープシップを基本とすることを提言するとしている。協会の方針に従う我々の取り組みが少しでも参考になれば幸いである。今後も方法論について報告していきたい。

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