著者
石坂 正大 久保 晃 金子 純一朗 野村 高弘 堀本 ゆかり 韓 憲受 貞清 香織 黒澤 和生 大村 優慈 森田 正治 江口 雅彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.531-536, 2017 (Released:2017-08-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

〔目的〕円滑な就職活動の支援に向けて,理学療法(以下,PT)学生における就職決定要因を検討することとした.〔対象と方法〕対象は平成27年度PT学科学部4学年とし,アンケートの協力が得られた144名であった.〔結果〕就職決定因子のうち重要性の高いのは,PTの上司の理解,役職者のリハビリに対する理解,臨床での技術指導の充実であった.主成分分析の結果,5つの主成分が抽出され,人的地域的親和性,待遇,卒後教育環境,立地,自己実現に関する項目であると解釈できた.〔結語〕就職決定因子として,上司の理解による人間関係,および病院・施設での研修制度の充実が重要である.
著者
古後 晴基 黒澤 和生 長谷川 敦子 有賀 透仁 秋吉 祐一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.41-44, 2010 (Released:2010-03-26)
参考文献数
13
被引用文献数
8 4

〔目的〕研究1は健常者の筋硬度を定量化し性差を検証することである。研究2は筋硬結を有する筋・筋膜痛症候群(Myofascial Pain Syndrome:以下MPS)において,筋疼痛と筋硬度との関連性を明らかにすることである。〔対象〕研究1では20歳代健常者52名とした。研究2では,病院受診者で画像検査・神経学的検査所見に異常がなく,慢性の腰痛を訴え最長筋に筋硬結を有する者44名とした。〔方法〕研究1では,最長筋,僧帽筋,大菱形筋の筋硬度を筋硬度計にて測定した。筋硬度の性差をt検定にて検証した。研究2では,筋硬度は筋硬度計にて測定し,筋疼痛は数値的評価スケール1)(numerical rating scale:以下NRS)にて測定した。筋疼痛と筋硬度との関連性をPearsonの相関係数にて検証した。〔結果〕研究1では,僧帽筋において,女性は男性と比較して有意に高い値を示したが,最長筋と大菱形筋においては,有意差は見られなかった。研究2では,筋硬結の筋疼痛と筋硬度との相関関係は弱かった。〔結語〕僧帽筋において,女性は男性と比較して筋硬度が高いことが分かった。筋硬結を有するMPSにおいて,筋疼痛の程度は筋硬度の程度に影響されないことが分かった。
著者
和田 太成 鈴木 啓介 黒澤 和生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.341-345, 2020 (Released:2020-06-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

〔目的〕膝蓋下脂肪体(IFP)の変形と膝関節痛の関係を検討する前段階として,健常若年者の膝関節運動(0~45°)に伴うIFPの形態変化を調べた.〔対象と方法〕健常若年者23名を対象に,超音波画像診断装置を用いて膝伸展位,15°,30°,45°屈曲位でのIFPの遠位部と中央部の厚みを測定した.〔結果〕IFPの遠位部は,伸展位から15°屈曲位の運動範囲で最も厚みの減少量が大きかったが,中央部では有意差を示さなかった.〔結語〕IFPは伸展位から15°屈曲位の運動範囲では,遠位部で膝関節屈曲に伴いIFPが介在する膝蓋靭帯深部の空間容積が増加して圧迫され変形が生じるが,中央部では変化がなかった.IFPの膝関節痛への関与が今後の検討課題である.
著者
冨田 浩輝 黒澤 和生
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101242, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】骨格筋への振動刺激は脊髄内の介在神経細胞を活性化し,シナプス前抑制により筋緊張を抑制する事が知られている.シナプス前抑制機能は,痙縮と深く関与している事が示唆されており,条件刺激と試験刺激を異なる筋に対して実施する方法により検討されている.しかし,振動刺激における筋緊張抑制効果において,条件刺激と試験刺激を異なる筋に対して実施した報告は少ない.また,この条件において,異なる振動周波数を用いて筋緊張に及ぼす影響を検証した報告はない.本研究の目的は,膝蓋腱や大腿二頭筋腱に異なる周波数の振動刺激を負荷し,同側ヒラメ筋のH波に及ぼす影響を明らかにする事である.【方法】対象は下肢に神経障害の既往のない健常成人男性42名であり,被験筋はヒラメ筋とした.すべての対象者には膝蓋腱と大腿二頭筋腱に振動刺激(80Hz,100Hz,120Hz)を負荷する2条件を設定し,誘発筋電図(日本光電社製)を用いて,安静時と振動刺激中,振動刺激直後,振動刺激終了5分後のH波とM波の最大振幅比を算出した.振動刺激装置には,旭製作所製WaveMakerを使用した.本研究における統計処理には,統計解析ソフトウェアSPSS18を使用した.各条件内における時間経過の検討として,反復測定一元配置分散分析を行った.尚,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り本研究を実施した.研究に先立ち,所属機関の倫理委員会において承認を得た.全ての対象者には事前に本研究の内容やリスク,参加の自由などの倫理的配慮について口頭および文書で説明し,書面にて同意を得た.【結果】膝蓋腱への振動刺激では,80Hzの周波数において,振動刺激中の最大振幅比が,その他の値と比べ有意に低値を示した.100Hzの周波数においては,振動刺激中の最大振幅比が安静時と比べ有意に低値を示した.また,振動刺激直後は振動刺激5分後よりも有意に低値を示した.120Hzの周波数においては,振動刺激中の最大振幅比が,振動刺激直後と振動刺激5分後と比べ有意に低値を示した.大腿二頭筋腱への振動刺激では,80Hzの周波数において,どの間に関しても有意差は認められなかった.100Hzの周波数においては,振動刺激中の最大振幅比は振動刺激直後と振動刺激5分後において有意に低値を示した.また,振動刺激直後の最大振幅比が振動刺激5分後の最大振幅比と比べ有意に低値を示した.120Hzの周波数においては,安静時と比べ振動刺激中と振動刺激直後で有意に低値を示し,振動刺激中は,安静時と振動刺激5分後と比べ有意に低値を示した.また,振動刺激直後は,安静時と振動刺激5分後と比べ,有意に低値を示した.【考察】今回,条件刺激と試験刺激を異なる筋に負荷し,膝蓋腱や大腿二頭筋腱といった異名筋への異なる周波数の振動刺激が,ヒラメ筋H波に及ぼす影響を検証した.本研究では,膝蓋腱への100Hz以上の振動刺激では,振動刺激中のH波は安静時よりも低値を示すが,振動刺激終了後は脊髄興奮性が上昇し,同側ヒラメ筋のH波を促通するという先行研究を支持する結果となった.しかし,80Hzの振動刺激においては,振動刺激中のヒラメ筋H波は有意に低値を示し,振動刺激直後も有意差は認められなかったが,最大振幅比は低値を示した.これは,膝蓋腱への80Hzの振動刺激は,ヒラメ筋H波を抑制した事が示唆され,Ericらの報告における,振動刺激が脳卒中後の足関節底屈を伴う下肢の異常な同時収縮を調整する可能性について支持する結果となった.更に,大腿二頭筋腱への振動刺激では,80Hzの周波数では,ヒラメ筋H波の抑制は得られず,大腿二頭筋に緊張性振動反射は生じなかったことが予想される.しかし,100Hz以上の周波数では,振動刺激中のH波の抑制が生じ,120Hzでは振動刺激終了直後でもH波の抑制が確認された.このことから,緊張性振動反射を誘発するには100Hz以上の周波数が必要であり,より強く筋収縮が誘発される事で,拮抗関係にある筋に対する抑制効果が増大する事が示唆された.【理学療法学研究としての意義】本研究において,振動刺激とシナプス前抑制は深く関与していることが明らかとなった.また,120Hzの振動周波数で大腿二頭筋腱へ振動刺激を負荷する事が,同側ヒラメ筋の筋緊張抑制に有効であることが示唆された.更に,振動刺激には,電気刺激同様の効果が期待できることが示唆され,その効果には振動周波数が深く関与していることが明らかとなった.今後,振動刺激が筋緊張に及ぼす影響や,その他の治療方法との比較などさらなる検討が必要であると考えられるが,本研究により,振動刺激が痙縮に対する有効な治療手段として臨床応用することや,家庭でのホームエクササイズの一つとして活用していく事が期待できるのではないかと考える.
著者
加辺 憲人 黒澤 和生 西田 裕介 岸田 あゆみ 小林 聖美 田中 淑子 牧迫 飛雄馬 増田 幸泰 渡辺 観世子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.199-204, 2002 (Released:2002-08-21)
参考文献数
15
被引用文献数
30 20

本研究の目的は,健常若年男性を対象に,水平面・垂直面での足趾が動的姿勢制御能に果たす役割と足趾把持筋力との関係を明らかにすることである。母趾,第2~5趾,全趾をそれぞれ免荷する足底板および足趾を免荷しない足底板を4種類作成し,前方Functional Reach時の足圧中心移動距離を測定した。また,垂直面における動的姿勢制御能の指標として,しゃがみ・立ちあがり動作時の重心動揺を測定した。その結果,水平面・垂直面ともに,母趾は偏位した体重心を支持する「支持作用」,第2~5趾は偏位した体重心を中心に戻す「中心に戻す作用」があり,水平面・垂直面での動的姿勢制御能において母趾・第2~5趾の役割を示唆する結果となった。足趾把持筋力は握力測定用の握力計を足趾用に改良し,母趾と第2~5趾とを分けて測定した。動的姿勢制御能と足趾把持筋力との関係を分析した結果,足趾把持筋力が動揺面積を減少させることも示唆され,足趾把持筋力の強弱が垂直面での動的姿勢制御能に関与し,足趾把持筋力強化により転倒の危険性を減少させる可能性があると考えられる。
著者
HAN Yuzuo 黒澤 和生
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.115-123, 2023 (Released:2023-04-15)
参考文献数
15

〔目的〕三種類の腸腰筋ストレッチングが脊椎と骨盤に与える影響を目的とした.〔対象と方法〕18人健常大学生を対象とし,腸腰筋に20秒3セットのスタティック・ストレッチング(SS),Hold Relax-PNF(HR-PNF),ダイナミック・ストレッチング(DS)を行い,T12,S1,腰椎前弯角度,腰椎可動域,骨盤傾斜角度をストレッチングの前,直後,30分後,60分後,90分後に測定した.〔結果〕HR-PNFはT12の増加と骨盤傾斜の減少が認められた.DSはT12の減少が認められた.ストレッチングの方法にかかわらず,腰椎可動域のある程度の増加を示した.〔結語〕HR-PNFは,若年健常者を対象として骨盤傾斜を減少する3つのなかで,最も有効的なストレッチング方法であることが明らかになった.
著者
岩室 樹 鈴木 啓介 黒澤 和生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.253-258, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
23

〔目的〕外来心臓リハビリテーション(外来心リハ)に参加している高齢者がレジスタンストレーニング非実施となる特徴を明らかにする.〔対象と方法〕外来心リハ患者24名(平均年齢78.9 ± 7.8歳)に対し,健康関連QOLや自己効力感に関する質問紙を実施した.毎回レジスタンストレーニングを行う実施群(11名)と行わない非実施群(13名)に分け検討した.〔結果〕非実施群は実施群に比べ,SF-36サマリースコアの身体的側面(PCS)が有意に低く,役割/社会的側面(RCS)が有意に高かった.〔結語〕外来心リハ時に身体的,社会的な側面の評価を行い,レジスタンストレーニングを定着させる介入を検討することが必要である.
著者
三浦 和 勝平 純司 黒澤 和生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.683-687, 2014 (Released:2014-10-30)
参考文献数
16

〔目的〕ヒラメ筋の痙縮抑制に効果的な圧迫強度と時間を明らかにすることである.〔対象〕地域在住の慢性期の脳血管障害片麻痺者18名.〔方法〕H波,M波の閾値と最大値の測定をヒラメ筋に対し軟性サポーターを用いた5つの強度(0,20,30,40,50 mmHg)と3つの時間(1,3,5分間)の組み合わせで施行した.臨床で行われているヒラメ筋の6つの痙縮評価も実施した.〔結果〕麻痺側の脊髄運動神経興奮性は,非麻痺側と比較し有意な亢進を示し,これとクローヌス数の間に有意な相関が認められた.40 mmHgで5分と30 mmHgで3分での圧迫により麻痺側の脊髄運動神経興奮性は他の組み合わせと比較して有意に低値をみせた.〔結語〕これらの強度と時間の組み合わせでの圧迫は,ヒラメ筋の痙縮抑制の効果を持つ.
著者
中元 唯 岡 真一郎 高橋 精一郎 黒澤 和生
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101553, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】疼痛は,組織破壊よる自発痛と,潜在的な組織障害および不快な感覚が絡み合った慢性疼痛がある.慢性疼痛は,自律神経反応との関連が深いことから交感神経の抑制を目的とした星状神経節や胸部交感神経節ブロック,星状神経節に対する直線偏光近赤外線照射などが用いられている.一方,理学療法においては,胸椎のマニピュレーションが指先の皮膚温を上昇させ,軽微な圧迫刺激が遅く鈍い痛みを特異的に抑えることから,胸背部への体性感覚入力が自律神経系に影響を及ぼす可能性がある.本研究の目的は,胸背部に対する持続的圧迫刺激が自律神経活動,末梢循環動態におよぼす影響について調査することとした.【方法】対象は,健常成人男性10 名(22.2 ± 1.2 歳)とした.測定条件は,室温25°前後で対象者を背臥位とし,メトロノームを用いて呼吸数を12 回/分で行うよう指示した.測定項目は,胸背部硬度,体表温度,心拍変動解析とした.胸背部への徒手的圧迫刺激は,簡易式体圧・ズレ力同時測定器プレディアMEA(molten)を用い,右第2 −4 胸椎棘突起の1 横指下外側に圧力センサーを接着して50mmHgに調整した.胸背部硬度は,生体組織硬度計PEK-1(井元製作所)を用いて右第2 −4 胸椎棘突起の1 横指下外側をそれぞれ3 回測定した.体表温度は,防水型デジタル温度計SK-250WP(佐藤計量器製作所)を用い,右中指指尖を1 分ごとに測定した.心拍変動解析は,心拍ゆらぎ測定機器Mem-calc(Tawara)を用いて心電図R-R 間隔をTotal Power(TP),0.04 〜0.15Hz(低周波数帯域,LF),0.15 〜0.40Hz(高周波数帯域,HF)として行った.自律神経活動の指標は,自律神経全体の活動をTP,副交感神経活動をHFn(HF/(LF+HF)),交感神経の活動をLF/HFとした.測定プロトコールは,圧迫前の安静10 分(以下,圧迫前),胸背部圧迫10 分,圧迫後の安静10 分(以下,圧迫後)とした.統計学的分析はSPSS19.0Jを用いて,圧迫前後の比較を対応のあるt検定およびWilcoxon符号順位和検定を行い,有意水準を5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき,対象者には研究内容を十分に説明し書面にて同意を得た後に測定を実施した.【結果】TPは圧迫前後で有意差がなかった.胸背部硬度は,圧迫前57.0 ± 4.3 から圧迫後55.8 ± 3.7 と有意に低下した(p<0.01).体表温度は,圧迫前33.8 ± 0.6℃から34.4 ± 0.6℃と有意に上昇した(P<0.05).心拍数は,圧迫前70.1 ± 12.9bpmから圧迫後67.6 ± 11.5bpmと有意に低下した(p<0.05).HFnは,圧迫前10.0 ± 4.7 から圧迫後13.0 ± 4.3 と有意に増加した(p<0.05).LF/HFは,13.5 ± 7.1 から圧迫後10.1 ± 5.4 と有意に低下した(P<0.05).【考察】胸背部硬度は圧迫後に有意に低下した.皮膚の静的刺激を感知する受容器は順応が遅く,持続的な圧迫刺激により皮神経支配領域のC線維を抑制すると報告されている.また,皮神経支配領域における求心性線維の興奮は,軸索反射により求心性神経終末から血管拡張物質を放出させる.胸背部硬度の低下は,圧迫刺激による皮膚受容器の順応,C線維の抑制と血管拡張に起因すると推察された.胸背部圧迫後のHFnは有意に上昇し,LF/HFは有意に低下した.ラットによる先行研究では,後根求心性線維への刺激は逆行性に交感神経節前ニューロンにIPSPを引き起こすとともに,脊髄を上行し上脊髄組織で統合されて交感神経節前ニューロンに投射し,副交感神経の興奮と交感神経の長期抑制を起こす.HFnの上昇とLF/HFの低下は,胸背部への圧迫刺激が副交感神経の興奮と交感神経の抑制を引き起こしたと考えられる.さらに,皮膚血管は交感神経性血管収縮神経によって支配されており,交感神経の抑制が皮膚血管を拡張させたため右中指体表温度が上昇したと考えられる.胸背部圧迫後の心拍数は有意に低下した.Miezeres(1958)は,犬の胸部交感神経節機能は左右差があり,右側が心拍数,左側が伸筋収縮力を増加させると報告している.本研究における圧迫後の心拍数の減少は,右胸部交感神経節の活動が抑制されたためと考えられる.胸背部への持続的圧迫刺激は,交感神経を抑制し,副交感神経を興奮させることが示された.上脊髄組織は,交感神経の長期抑制させることから胸背部圧迫刺激の持続性について検討する必要がある.【理学療法学研究としての意義】胸背部への軽度な持続的圧迫刺激は,慢性疼痛を有する患者の治療法のとして有用な可能性がある.
著者
黒澤 和生
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.111-115, 2000 (Released:2007-03-29)
参考文献数
10
被引用文献数
2

徒手的治療手技のうち,軟部組織モビライゼーションを取り上げ,軟部組織の傷害と臨床症状,そして治療の概要について述べた。軟部組織モビライゼーションが軟部組織の痛みに対する1つの治療手段であるが,疼痛を引き起こす原因であるOveruse(使いすぎ)となる生活習慣や仕事の内容等を把握し,適切な生活指導を行っていくことが痛みの管理には重要である。
著者
岡山 裕美 大工谷 新一 黒澤 和生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.623-633, 2019

<p>〔目的〕歩行速度を変化させた場合のPhysiological Cost Index(PCI)および表面筋電図の変化とそれらの関係性を明らかにすることとした.〔対象と方法〕対象は整形外科学的,神経学的に問題のない健常者35名とした.歩行速度は各被験者が快適であると感じる歩行速度(FWS)を基準とし,5種類の歩行速度で歩行させた.その際,心拍数および表面筋電図の計測を行い,PCI値,筋電図積分値(IEMG),中間周波数(MdPF),平均周波数(MPF)を算出した.〔結果〕PCI値はFWSにおいて-50%FWS,50%FWSより有意に低値を示した.歩行速度の増加に伴いIEMGは増大したが,MdPFとMPFは低周波から中周波帯域での活動を示した.〔結語〕歩行速度の増加に伴いPCIはFWSより速くても遅くても増大し,IEMGは増大することが確認された.</p>
著者
黒澤 和生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.341-346, 2008 (Released:2008-06-11)
参考文献数
5

スポーツ傷害には,スポーツ外傷とスポーツ障害がある。特に,後者のスポーツ障害とは,同一動作の繰り返しにより生じる痛みを主訴とする損傷のことであり,Over Use(オーバーユース:使いすぎ)がその原因である。膝内障,膝蓋腱炎(ジャンパー膝),野球肘,野球肩などが挙げられるが,ここでは肩のインピンジメントに焦点を当て,オーバーユースによる機能障害の評価と治療(軟部組織モビリゼーション)について概要を述べる。
著者
中村 壮大 勝平 純司 村木 孝行 松平 浩 黒澤 和生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.547-550, 2016 (Released:2016-08-31)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

〔目的〕本研究は,三次元動作分析装置を用いて,肩関節の外転運動における若年者と高齢者の肩甲上腕リズムを比較し,加齢による影響を明らかにすることである.〔対象と方法〕若年男性21名と高齢男性17名を対象とした.課題動作は,肩関節外転運動とし,三次元動作分析装置を用いて肩甲上腕リズムを分析した.〔結果〕肩関節外転運動における上腕骨と肩甲骨の関係性である肩甲上腕リズムは,若年者では3.5:1の割合となった.次に高齢者における肩甲上腕リズムは4.4:1の割合となった.〔結語〕本研究より,加齢に伴い肩甲上腕リズムが異なることが明らかとなった.本研究で得られた結果は,理学療法分野における重要な知見となる.
著者
金 信敬 黒澤 和生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.275-279, 2006 (Released:2006-09-22)
参考文献数
15
被引用文献数
6 6

本研究は,地域の女性高齢者を対象に5ヶ月間太極拳運動を実施し,太極拳運動による身体機能の改善及び転倒予防の可能性を検討することである。対象は,太極拳群30名(平均年齢72.2±3.5歳),対照群30名(平均年齢71.6±4.5歳)であった。両群に対して,研究実施前後の身体機能測定,転倒の有無に関する質問,及び太極拳群のみへの自主練習実施状況,太極拳運動への感想,今後の継続意志について質問法での調査を実施した。その結果,太極拳群の片足立ち時間,握力,Functional Reach (FR),歩行速度,立位体前屈,片足立ち振りの全ての項目の測定値において有意に向上したが,対照群では全ての項目の測定値において有意な変化は見られなかった。また,太極拳群では,研究実施前の一年間で転倒を経験した人数に比べ,5ヶ月間の研究期間と研究終了後の半年間で転倒を経験した人数に有意な減少を示した。
著者
永井 良治 金子 秀雄 黒澤 和生
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48102011-48102011, 2013

【はじめに】本学科は2010年より大学関連施設においてクリニカルクラ-クシップ(以下:CCS)を導入している。CCSを導入するにあたり数年前より関連施設の臨床実習指導者(以下:SV)と技術習得のために重要項目を挙げ「見学・模倣・実施」のチェックリストを作成した。CCS導入は、学生がある段階で解決困難な問題が生じるとそこから先には進めなくなり、評価段階だけとなることや、急性期病院では評価のみとなり、理学療法を「実施」する経験が非常にすくない。業務終了後に学生指導に時間がかかり思うように学習効果向上しないことなどが挙げられCCSを導入した。認知領域偏重の指導ではなく、精神運動領域を中心にチェックリストを作成した。チェックリストは検査測定40項目、治療技術40項目の合計80項目からなる。臨床実習は8週間で週1回は教員による学生指導を実施している。今回はSVに対してCCSに関するアンケ-ト調査を実施し現状と問題点ついて報告する。【方法】臨床経験4年目(平均7.8±3.3年)以上の41名を対象とした。臨床経験4~9年目30名(平均6.2±1.9年)、10年目以上11名(平均12.1±2.3年)であった。アンケ-ト内容は1)、従来の実習形態より経験値は高まるか。2)、能動的な学習(積極性)は従来の実習形態と比べ学生の行動変化が感じられるか。3)、技術領域の習得は従来の実習形態より高まるか。4)、患者の不安、リスク、また指導者の不安は軽減しているか。5)、「見学」・「模倣」・「実施」のプロセスから学生の理解度を把握できるか。6)、ケースノートとディスカションを通して学生の理解度が把握できるか。7)、SVと一緒に診療参加することで理学療法全体に関する理解度は高まるか。8)、「見学」・「模倣」・「実施」を繰り返すことで問題解決能力は向上しているか。9)、SVの学生指導の負担は軽減しているか。10)、CCSを支持するかの10項目である。各項目の回答は「そう思わない」「どちらでも言えない」「そう思う」とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には、本研究の目的と方法を文章と口頭にて十分に説明し同意を得た。【結果】CCSの支持は臨床経験10年目以上では72.7%であり、全体では48.8%であった。 10項目において「そう思う」は、1) 53.6%、2) 26.8%、3) 58.5%、4) 39.0%、5) 36.6%、6) 34.1%、7) 56.1%、8) 26.8%、9) 56.1%、10) 48.8%であった。「そう思わない」が「そう思う」より割合が大きい項目は2) 能動的な学習(積極性)は従来の実習形態と比べ学生の行動変化が感じられるか。 6) ケースノートとディスカションを通して学生の理解度が把握できるか。8) 「見学」・「模倣」・「実施」を繰り返すことで、問題解決能力は向上しているか。 以上の3項目であった。臨床経験10年目以上では、1) 100%、2) 36.4%、3) 81.8%、4) 63.7%、5) 72.7%、6) 54.6%、7) 54.6%、8) 27.3%、9) 72.7%、10) 72.7%であった。【考察】CCSの臨床実習形態に変更して2年経過した。現在、当学科では約半数学生が関連施設でCCSの実習と外部施設での実習を経験する。指導体制は各関連施設の方針に従っている。作成したチェックリストの「実施」になる項目数はすべての関連施設で平均75%以上は到達できるものである。教員は「見学」・「模倣」・「実施」のチェック状況とその内容の理解の把握と指導をしている。CCS導入の目的であった経験値の向上、技術領域の習得、理学療法全体に関する理解の向上は「そう思う」の割合が高く有効な臨床実習に進みつつある。また業務時間外の指導がないことでSVの負担軽減にも繫がっている。CCSはSVの経験年数により、捉え方は異なりSVと連携して学生指導方法についてさらに検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】当学科では関連施設においてCCSを実施している。協会の理学療法教育ガイドラインでは、実習形態は学生が主体となって患者を担当する形態を排除し,クリニカル・クラープシップを基本とすることを提言するとしている。協会の方針に従う我々の取り組みが少しでも参考になれば幸いである。今後も方法論について報告していきたい。
著者
加辺 憲人 黒澤 和生 西田 裕介 岸田 あゆみ 小林 聖美 田中 淑子 牧迫 飛雄馬 増田 幸泰 渡辺 観世子
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.199-204, 2002-08-20
被引用文献数
27 20

本研究の目的は,健常若年男性を対象に,水平面・垂直面での足趾が動的姿勢制御能に果たす役割と足趾把持筋力との関係を明らかにすることである。母趾,第2~5趾,全趾をそれぞれ免荷する足底板および足趾を免荷しない足底板を4種類作成し,前方Functional Reach時の足圧中心移動距離を測定した。また,垂直面における動的姿勢制御能の指標として,しゃがみ・立ちあがり動作時の重心動揺を測定した。その結果,水平面・垂直面ともに,母趾は偏位した体重心を支持する「支持作用」,第2~5趾は偏位した体重心を中心に戻す「中心に戻す作用」があり,水平面・垂直面での動的姿勢制御能において母趾・第2~5趾の役割を示唆する結果となった。足趾把持筋力は握力測定用の握力計を足趾用に改良し,母趾と第2~5趾とを分けて測定した。動的姿勢制御能と足趾把持筋力との関係を分析した結果,足趾把持筋力が動揺面積を減少させることも示唆され,足趾把持筋力の強弱が垂直面での動的姿勢制御能に関与し,足趾把持筋力強化により転倒の危険性を減少させる可能性があると考えられる。<br>