- 著者
-
山崎 貴子
- 出版者
- 人文地理学会
- 雑誌
- 人文地理学会大会 研究発表要旨
- 巻号頁・発行日
- vol.2003, pp.41, 2003
学習塾の全国的な動向を分析し、次に京都市右京区を事例地域として、学習塾の立地場所・立地形態等の変化、および生徒の属性などを検討した。 その結果、以下のことが明らかになった。 1 大手学習塾の多くは、高度経済成長期から安定成長期に創立され、規模が拡大している。学齢期人口の増加および高学歴化などにより、営利性が高まったことが要因と考えられる。 2 学齢期人口と学習塾の件数との関係は、大都市レベルではほぼ正の相関関係にある。しかし、京都市を例とした都市内レベルでの検討によると、交通の至便性および地域の教育水準が関与しており、両者の相関関係は低くなる。 3 京都市右京区にある学習塾は、「単体開設」の学習塾が住居系用地にある「自己所有」の物件を利用して展開するタイプから、「複数開設」の学習塾が商工業系用地にある物件に「テナント」として入居し展開するタイプに変化してきている。 4 学習塾は、様々なニーズに対応するため、対象学年の広範囲化、小学生の英語教育、さらに個別指導の強化など、多様な事業を展開している。 5 学習塾の選択背景には、居住地からの距離や交通手段、および学習塾の教育方針が関わっている。 完全学校週5日制の実施および教育内容の削減などにより、教育機関としての学習塾の役割は、ますます大きくなると思われる。また、学習塾を含む民間教育機関、学校および地域の連携の動きがみられ、民間教育機関が地域の中で果たす役割も注目されている。民間教育機関の情報公開の消極性が克服されれば、地理学からの教育に関する研究のさらなる発展が望めよう。