著者
光村 実香
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ea0369, 2012

【はじめに、目的】 通所リハビリテーション(以下,デイケア)は,リハビリテーション(以下,リハビリ)を専門とする理学療法士ら(以下,療法士)が多職種協働で利用者の日常生活の自立や介護度の重度化を予防する目的の施設である。リハビリで獲得した動作を生活に密着させるには,介護職と利用者の援助場面でもその動作を実践することが重要である。そこで本研究は,デイケアで働く療法士が介護職と連携しながら自立支援を行うプロセスを明らかにすることを目的に行った。【方法】 対象者はデイケアで勤務するPT 2名,OT 4名,ST 1名の療法士7名(女性1名,男性6名),デイケアでの経験年数は1.5~9年であった。期間2008年5月22日~8月7日である。まず施設で利用者,介護職,療法士の関わりに注目しながら参加観察を行った。その後,参加観察で得た自立支援の関わりをもとにインタビューガイドを作成し,療法士に半構造化面接を行った。面接時間は45~60分で,対象者に許可を得てインタビュー内容を録音し,逐語録におこし修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析,結果図を作成した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は金沢大学医学倫理委員会の承認を受け実施した(受付番号183)。研究説明書を用いて研究手順や個人情報の保護等について説明を行い,同意書の署名をもって研究参加の承諾とした。【結果】 【カテゴリー】4個,<サブカテゴリー>6個,[概念] 20個が抽出され,コアカテゴリーは【している動作の状況化】で,療法士がリハ室だけの関わりではなくできる動作をしている動作としてデイケア内の場面に定着させることであった。ストーリーラインを示す。デイケアで療法士がリハビリをプロデュースするプロセスは療法士が利用者の【できる動作の明確化】から始まる。療法士の視点で利用者が持つ[潜在ニーズ・能力の掘り起こし]を行い,予後を見据えた[その先の目標設定]をし,動作獲得に必要なアプローチを考える。これらを<リハビリ構想>として〔できる動作能力アップ〕を図り,動作改善を行う。また練習の中で成功体験を積み重ね精神面からも〔動作遂行への自信作り〕へ働きかけ<できる動作獲得への実践>を行う。この関わりは,在宅生活を視野に入れた【更なる能力アップの可能性】へつながる。ある程度の動作能力向上が図れると,その動作をデイケア内に同化させる為【している動作の状況化】を行なう。方法は介護職や家族の前で療法士が介助し,その方法を[やってみせる]ことで利用者の能力を知ってもらう,[専門性を活かした助言・指導]を行い利用者の状態を理論的に説明する等である。これらの働きかけにより介護職に利用者の<できる動作の顕在化>を示す。さらにできる動作を発展させる為に<している動作の環境作り>を行なう。これは実際の援助場面に合わせた[そのタイミング,その場面]での動作練習や,介護職個々と利用者の援助方法を話すことで[ケアの意識の並列化]を試みる。またできる動作に基づく援助に不安を抱く介護職には[リハビリ的関わりの後押し]をし,できる動作を介護場面に活かすよう促す。<できる動作の顕在化>と<している動作の環境作り>は様々な場面と状況で繰り返し行われる。しかし【している動作の状況化】を図る上で介護職との間に〔利用者ニーズ優先〕と〔タイムスケジュール優先〕,〔愛護的援助〕と〔手助け的援助〕等<価値観のズレ>が生じることがある。療法士は〔リハビリのプライド〕としてデイケアにリハビリがある意義や,〔デイサービスとの差別化〕等<療法士の信念>の強い気持ちから,このズレを修正しようとする。そこで【している動作実現への足場作り】として介護職の責任者を説得し〔協力者を増やす〕,〔カンファレンスの活用〕で話し合いを通じ意見を統一する,家族と介護職の問題に共に取り組み〔利用者問題の共有化〕等を行う。これらの取り組みが介護職との連携の足場となり【している動作の状況化】がより円滑に進むようにする。【している動作の状況化】が進むと〔新たな能力獲得を見込んだ関わり〕や〔在宅生活を吟味した援助〕等【更なる能力アップの可能性】を見出し,在宅生活を見据えた関わりに発展していく。【考察】 療法士はデイケア内の動作だけではなく,それらを在宅生活につなげていくことまでを想定し,利用者や介護職と関わりを持っていると考えられる。援助場面にリハビリ的関わりを導入するには,介護職との価値観のズレや時間的制約を改善する工夫が必要である。【理学療法学研究としての意義】 デイケアでの理学療法士の役割を明確化する一助となる。それにより多職種との連携が図りやすくなり,利用者に質の高い理学療法を提供することができる。

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