著者
山口 泰弘
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.395-402, 2014
被引用文献数
2

高齢者に特徴的な肺組織像である老人肺では,炎症性変化や不規則な肺胞壁の断裂を伴うことなく,気腔が拡大し,肺の弾性収縮力は低下する。また,加齢とともに胸郭は硬くなり,呼吸筋力も低下する。そのため,呼吸機能検査では,一秒率が低下,肺活量が低下,残気量が増加,肺拡散能が低下する。そのほか,特に運動時には,加齢とともに肺動脈圧は上昇しやすくなる。睡眠呼吸障害の頻度も高齢者で増加する。また,高齢者では気道過敏性の亢進を示す症例が増えることや,線毛活動による気道異物の排出が遅延していることも報告されている。運動時には呼気流速の低下から一回換気量が十分に増加せず,加齢による運動耐容能低下の一因となっている。さらに,高齢者では,脊柱の強い後弯や著しいるい痩など,多様な病態が気道・肺機能の低下を増強する。加齢による劇的な呼吸機能の低下に比べて,安静時の動脈血酸素分圧の低下は軽く,動脈血二酸化炭素分圧は変化しない。すなわち,高齢者では,肺の障害に対する予備能が低下しているといえる。このような機能低下は,肺結核後遺症による呼吸不全の進行や慢性閉塞性肺疾患患者の経年的な呼吸機能低下の要因であり,また,高齢者に肺炎が頻発し,重症化,長期化しやすい一因でもある。

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例えば、 老人肺は、残気量が増え、また気道異物の排出が遅延する。 姿勢の変化は肺機能低下を増強する。 総じて高齢者は肺の障害に対する予備能が低下している。 高齢者に肺炎が頻発し,重症化,長期化しやすい一因とされる。 https://t.co/0kJOUSOaHZ

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