著者
石井 正紀 山口 泰弘 井角 香子 中村 友美 金井 淳子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

慢性閉塞性肺疾患 COPD) は、加齢に伴い進行し高齢者で多発する老年呼吸疾患である。肺の老化とも関連するCOPDでは、ビタミンD血中濃度低下が、肺機能低下や重症度と相関することが分かってきている。しかし、ビタミンDの補充がCOPDの進行を抑制するかは明らかになっておらず、今回、われわれは、肺特異的ビタミンD受容体過剰発現トランスジェニックマウスを作製し、ビタミンD受容体は、肺組織局所において、抗炎症効果の観点から、COPD増悪の抑制に寄与する可能性が示唆された。また喫煙は、肺胞上皮細胞におけるビタミンD受容体発現に対する負の制御因子としてその発現量の低下を誘導する可能性が示唆された。
著者
平原 佐斗司 山口 泰弘 山中 崇 平川 仁尚 三浦 久幸
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.60-67, 2022 (Released:2022-02-17)
参考文献数
17

目的:末期認知症高齢者の肺炎に対する抗菌薬の予後と苦痛の改善効果を検討する.方法:国内外のデータベースから検索式を用い,末期認知症の肺炎の抗菌薬治療の予後と苦痛の改善効果についての2つ の CQs を含む5つの CQs に該当する 604 論文を抽出,最終的に採用した 17 論文のうちこれらの CQ に該当する6論文を解析した.結果:末期認知症高齢者の肺炎の抗菌薬治療は予後を改善する可能性があり,とりわけ短期の予後の改善が期待できる.抗菌薬治療の予後改善効果は認知症や嚥下障害の重症度や過去の肺炎回数と関連していた.また,抗菌薬治療が肺炎による死亡前の苦痛を軽減する可能性が示唆された.
著者
山口 泰弘
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.395-402, 2014
被引用文献数
2

高齢者に特徴的な肺組織像である老人肺では,炎症性変化や不規則な肺胞壁の断裂を伴うことなく,気腔が拡大し,肺の弾性収縮力は低下する。また,加齢とともに胸郭は硬くなり,呼吸筋力も低下する。そのため,呼吸機能検査では,一秒率が低下,肺活量が低下,残気量が増加,肺拡散能が低下する。そのほか,特に運動時には,加齢とともに肺動脈圧は上昇しやすくなる。睡眠呼吸障害の頻度も高齢者で増加する。また,高齢者では気道過敏性の亢進を示す症例が増えることや,線毛活動による気道異物の排出が遅延していることも報告されている。運動時には呼気流速の低下から一回換気量が十分に増加せず,加齢による運動耐容能低下の一因となっている。さらに,高齢者では,脊柱の強い後弯や著しいるい痩など,多様な病態が気道・肺機能の低下を増強する。加齢による劇的な呼吸機能の低下に比べて,安静時の動脈血酸素分圧の低下は軽く,動脈血二酸化炭素分圧は変化しない。すなわち,高齢者では,肺の障害に対する予備能が低下しているといえる。このような機能低下は,肺結核後遺症による呼吸不全の進行や慢性閉塞性肺疾患患者の経年的な呼吸機能低下の要因であり,また,高齢者に肺炎が頻発し,重症化,長期化しやすい一因でもある。
著者
大田 秀隆 本多 正幸 山口 泰弘 秋下 雅弘 大内 尉義
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.627-631, 2012 (Released:2013-03-04)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

プロトンポンプ阻害薬であるランソプラゾール長期内服によるcollagenous colitisが原因となった,慢性に持続する水様下痢症の一例を報告する.症例は75歳女性.ランソプラゾール(30 mg/日)内服開始後より水様性下痢および体重減少が持続し,上部・下部消化管内視鏡・便中脂肪精査・消化管シンチが施行されたが,上部消化管内視鏡で萎縮性胃炎を認めた以外に異常所見は認められず,以後2年以上にわたり慢性的な下痢が持続していた.2011年5月末より,下痢症状に加え,歩行障害・意識障害が出現し,原因精査および加療目的に入院となった.入院後,薬剤性の下痢を疑ってランソプラゾールを中止しファモチジン(20 mg/日)に変更,中止後数日で下痢は軽快消失しており,同剤によるcollagenous colitisが原因として疑われた.下部消化管内視鏡による病理組織検体からcollagenous colitisの所見を認め,確定診断に至った. collagenous colitisは特に高齢女性に多いことがわかっている.原因不明の難治性下痢症として放置されることが多く,長期間持続する下血を伴わない水様下痢が主症状であり,腹痛・体重減少・低蛋白血症を伴うこともある.これらの症状は,通常は原因薬剤の中止のみで数日~数週で症状は改善し治癒するが,放置されたまま原因不明の下痢症として扱われている場合も多い.これら慢性的な下痢症状は,高齢患者のADLを著しく低下させ,また介護者による負担をも増やすことになる. 今回の症例のように確定診断には,その他の原因疾患の除外・下部内視鏡検査正常所見・下部消化管内視鏡による大腸粘膜生検が必須であるが,確定診断に至る前にcollagenous colitisを念頭に,原因となる薬剤を中止してみることが重要であると考えられ,ここに報告する.
著者
須甲惇 大久保雅史 山口泰弘 山下翼
雑誌
第74回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.83-84, 2012-03-06

近年、ゲームソフトの多様化が進むにつれて、ユーザのゲームソフトに対する嗜好も多様化してきている。また、ユーザの中でもゲームに慣れ親しんでいるヘビーユーザと、時折ゲームに触れるに留まるライトユーザの二分化がより明らかに進んできている。その中で、ユーザのゲームに対する熟練度という点において、全てのユーザが楽しめるゲームデザインを行うことは困難になりつつある。そこで本研究では、ミハイチクセントミハイの提唱するフローのモデルを基に、ユーザのスキルレベルとゲームに対する没入度を定量的に評価した上で、ユーザのスキルに適したゲームの難易度を提供するシステムを提案する。