著者
仲 真紀子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.28-37, 1983
被引用文献数
1

本研究では, 論理的推論において用いられる「だから」(「だから」の論理的機能。例:「夏は暑い。だから暑くなければ夏ではない。」) と経験的推論において用いられる「だから」(「だから」の経験的機能。例:「夏は暑い。だから薄着をする。」) を区別し, これらがどのように獲得されるかを調べた。被験者は小学校2年, 4年, 6年である。但し調査と実験では中学生, 大学生についても調べた。<BR>調査では, 2つの機能の獲得過程を調べる実験的研究に先がけ, 実際に「だから」の2つの用法があるかどうか, また「だから」にそれら以外の用法があるかどうかを調べた。方法は文章完成課題 (例:「夏は暑い。だから-。」) を用いた。<BR>実験では, 「だから」を含む命題を聴覚呈示し, 「だから」の使い方が正しいか否かを評価させることにより, 論理的機能, 経験的機能がどの程度獲得されているかを調べた。<BR>補足実験は, 上の実験で得られた発達傾向の再現性と外乱に対する安定性を調べるために行われた。「だから」の使用に関する1度限りの教授を行い (外乱), その効果を事前・事後テストで測定した。<BR>主な結果は以下の通りである。<BR>1. 「だから」は論理的命題, 経験的命題に用いられる。また, その他の命題 (対立や類比) にも用いられることがある。<BR>2. 論理的機能は小学校期では十分獲得されない。<BR>3. 経験的機能は2年でもかなり獲得される。<BR>4. 主観的命題 (例:「あの犬は小さい。だからかわいい。」) や類比的ないし疑似類比的命題 (例:「リンゴは赤い。だからバナナは長い。」) における「だから」の使用を正しいとする反応は, 小学校期を通じて著しく減少する。<BR>5. 以上 (2, 3, 4) の発達傾向は再現性があり, また1 度限りの教授という-過性の外乱に対して安定である。

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