著者
石原 融 武田 康久 水谷 隆史 岡本 まさ子 古閑 美奈子 田村 右内 山田 七重 成 順月 中村 和彦 飯島 純夫 山縣 然太朗
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.106-117, 2003

<b>目的</b> 思春期の肥満は成人肥満に移行することが多く,学童期あるいは,それ以前の肥満の対策が重要とされている。本研究は,縦断研究により思春期の肥満と幼児期の生活習慣,家族関係および体格等との関連を明らかにすることを目的とした。<br/><b>対象と方法</b> 1987年 4 月から1991年 3 月に山梨県塩山市で出生した児を対象として,1 歳 6 か月,3 歳児健康診査時の質問票とその時の身長,体重の実測値,また,思春期は2000年 4 月の健康診断時の身長,体重の実測値を解析に用いた。平成12年度の学校保健統計調査結果の年齢,性,身長別の平均体重を標準体重として,肥満度を算出し,20%以上を肥満と判定した。1 歳 6 か月,3 歳時の体格についてはカウプ指数を用い,生活習慣については健康診査時の調査票の生活習慣項目を用いて,思春期の肥満との関連について解析した。<br/><b>結果</b> 1 歳 6 か月児健康診査時の質問票の回収数は883人で,思春期まで追跡可能であった児が737人であった(追跡率83.5%)。平均追跡期間は10年11か月であった。<br/> 1 歳 6 か月時と 3 歳時のカウプ指数高値群において有意に思春期の肥満者が多くオッズ比はそれぞれ2.61 (95%信頼区間:1.11-6.12)と5.34 (2.54-11.23)であった。また,母親の肥満群において有意に思春期の肥満者が多く,オッズ比は5.32 (2.67-10.60)であった。<br/> 生活習慣項目では,1 歳 6 か月時の「室内で一人で遊ぶことの多い」のオッズ比が3.01 (1.01-8.99),また,3 歳時の「おやつの時間を決めずにもらっていた」のオッズ比が2.12 (1.25-3.61)で思春期の肥満のリスクであった。食品項目では,「牛乳」摂取頻度のみが思春期の肥満と有意な関連を示し,オッズ比0.63 (0.41-0.95)であった。<br/> 共分散構造解析を行い逐次因果最適モデルを求めた。3 歳時の体格,母親の体格,遊び方,おやつの取り方,牛乳摂取は思春期の体格に影響を与えていた。また,母親の体格は子どもの要求の応じ方に影響しており,子どもの要求の応じ方はおやつの取り方に影響を与えていた。<br/><b>結論</b> 思春期の肥満は,1 歳 6 か月と 3 歳時の体格,母親の体格,幼児期の遊び方,おやつの取り方,牛乳摂取と関連があった。遺伝要因が強いことが確認されたが,幼児期の生活習慣も思春期の肥満と関連していることが示唆された。

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