著者
中村 和彦 杉山 登志郎
出版者
弘前大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

虐待関連性発達障害(自閉症様症状およびADHD様症状)を呈する成人患者に対してPET研究を行った。脳内ドパミンD1受容体の増減で、虐待関連性発達障害の病態がわかり、鑑別ができる可能性がある。虐待関連性発達障害のトラウマ処理の技法として、短時間で行うチャンスEMDRを開発しトラウマ処理への効果を見出した。少量薬物療法について、神田橋條冶による漢方処方のトラウマへの効果、少量抗精神病薬の併存症への効果を見出した。
著者
土屋 賢治 松本 かおり 金山 尚裕 鈴木 勝昭 中村 和彦 松崎 秀夫 辻井 正次 武井 教使 宮地 泰士 伊東 宏晃
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

背景と目的自閉症スペクトラム障害(ASD)の危険因子として父親の高年齢が指摘されている。今年度の本研究では、父親の高年齢が児の認知発達にどのような影響を与えるかについて、本研究では、父親の年齢という非遺伝的要因の発症への寄与を、関連因子の評価を交えて、prospectiveおよびretrospective二つの方向を交えた疫学的探索的研究を行った。方法(1)Retrospective研究:自閉症・アスペルガー障害または特定不能の広汎性発達障害(ASD)と診断され総IQが70以上の84名(5~27歳、女性14名)、精神科診断を持たない208名(5~34歳,女性104名)から、臨床情報を取得するとともに、母子手帳を通じて両親の生年月日を確認し、出生時の父親・母親の年齢とASD診断との統計学的関連をロジスティック回帰分析を用いて検討した。(2)Prospective研究:浜松医科大学医学部附属病院産婦人科(静岡県浜松市東区)および加藤産婦人科(静岡県浜松市浜北区)の2病院を2007年11月19日より2009年7月1日までに妊婦検診を目的に受診し、研究への参加の同意が得られた全妊婦780名と、その妊婦より出生した児809名を対象とした。この児を最長3年3ヶ月追跡し、Mullen Scales of Early Learningを用いて、運動発達および認知発達(視覚受容、微細運動、受容言語、表出言語)を3~4ケ月ごとに繰り返し測定した。また、父親の年齢と関連する生物学的要因として、生殖補助医療に関するデータを収集し、関連を解析した。結果とまとめ(1)出生時の父親の年齢が高いほど、児のASD診断のリスクが高いことが示された。母親の年齢には同様の関連は見られなかった。出生時の父親の年齢とASD診断のリスクとの関連の強さは、母親の年齢や出生順位、性別、自身の年齢を考慮に入れても変わらなかった。(2)粗大運動、視覚受容、微細運動、表出言語の発達、発達指標の到達、ASD疑い診断に、出生時の父親の年齢は統計学的に有意な関連をしていなかった。しかし、生殖補助医療の有無(なし、IVF、ICSI)は、いずれの発達変数においても、なし-IVF-ICSIの順に発達が遅れる傾向が認められた。欠損値に対する配慮からStructural equation modelingによって解析を進めたが、サンプル数の限界のため、父親の年齢と生殖補助医療の交互作用については言及できなかった。結論父親の年齢とASD発症リスクの生物学的基盤としての生殖補助医療の関与を確定することはできなかった。しかし、その可能性が示唆されるデータが一部から得られた。
著者
中村 和彦
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.137-151, 2013 (Released:2013-03-09)
参考文献数
26

本研究の目的は,ラボラトリー方式の体験学習を用いた授業が大学生の対人的傾向やソーシャルスキルに及ぼす効果について,不等価統制群事前事後テストデザインによって検証することであった。加えて,体験学習のEIAHE'モデルに基づく「体験から学ぶ力」の個人差が,ラボラトリー方式の体験学習の効果に影響するかどうかについて検証することも目的とした。大学1年次の春学期にラボラトリー方式の体験学習を用いた授業を受講した対象者を実施群,同学年同学科で受講しなかった対象者を統制群とし,授業開始時期の4月と授業終了時期の7月に,対人的傾向やソーシャルスキル尺度,「体験から学ぶ力」評定尺度への回答を求めた。その結果,統制群に比べて実施群の対象者は,「自己発見動機」得点が有意に上昇することが明らかになり,ラボラトリー方式の体験学習は自己への気づきに対する動機づけを高めることが示された。また,実施群において「体験から学ぶ力」の自己評定が高い群は低い群に比べて,「ソーシャルスキル」合計得点とその下位尺度である「問題解決スキル」,「コミュニケーション・スキル」の得点が有意に上昇することが明らかになった。
著者
宮地 泰士 杉原 玄一 中村 和彦 武井 教使 鈴木 勝昭 辻井 正次 藤田 知加子 宮地 泰士
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

自閉症の特徴の一つである「対人的相互作用の障害」は共感性の障害に基づくと考えられている。本研究では、自閉症の共感性の障害の神経基盤を探る目的で、機能的磁気共鳴画像(fMRI)により共感が惹起された時の前部帯状回の活動を計測し、自閉症との関連が指摘されているセロトニン・トランスポーター遺伝子多型との関連を検討する。平成21年度は、以下のように研究を進めた。平成20年度において選定した成人自閉症者5例、健常対照5例を対象に、他者の痛みを感じるような画像刺激を提示し、fMRIを撮像した。撮像プロトコルはTE=40msec,TR=3000msec,In-planere solution=3.1mm,スライス厚=7mm,ギャップ=0.7mm,18スライスとした。その結果、「身体的な痛み」、「心の痛み」のいずれを惹起する課題においても、活性化する脳領域に両群で有意な差はなかった。この結果には、例数の不足による検出力低下が影響していると考えられる。今後、さらに対象者を募る予定である。また、共感性の障害において前部帯状回と深く関係する脳部位の一つに海馬があるため、成人自閉症者の海馬における代謝物量を磁気共鳴スペクトル法により測定した。その結果、自閉症者の海馬ではクレアチン、コリン含有物が健常者に比べ増加しており、その増加は自閉症者の攻撃性と有意に正相関することを見出した(Int J Neuropsychopharmacol誌に公表)。
著者
小澤 哲也 金沢 翔一 長野 康平 浅川 孝太 中村 和彦
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.533-549, 2021 (Released:2021-08-18)
参考文献数
47

The first objective of this study was to develop a course unit plan for physical fitness in the lower grades of elementary school, in which traditional play as exemplified by exercises for physical fitness are used as teaching material to create various movements (Study I). The second objective was to conduct classes using traditional play as teaching material based on the course unit plan, in order to gain an understanding of the fundamental movements that appear and the amount of physical exercise during the class (Study II). Study I: A total of 163 traditional play physical activities were selected from prior studies and related publications. 22 elementary school third graders were examined for the fundamental movements included in 42 of the traditional play physical activities. The median number of such fundamental movements that appeared was 3 (minimum: 1, maximum: 8). From the survey results, traditional play physical activities were selected from among those that had no bias in their fundamental movements and had rules that could easily be changed and levels of difficulty that could easily be adjusted, and a course unit plan was developed taking into account the ease of class preparation by teachers. Study II: A total of 5 lessons based on the course unit plan were given to 23 elementary school second graders. The fundamental movements were measured using observational methods, and the number of steps was measured objectively using an accelerometer. The fundamental movements observed and the number of steps measured during the course unit were compared with the age-appropriate standards for motor skills. The results revealed the following: 1) Of the 28 fundamental movements that were set, 25 were observed during the course unit. 2) There was a high frequency of fundamental movements common to many of the traditional play physical activities. 3) The mean number of steps in the physical education classes with diverse movements using traditional play physical activities as teaching materials for lower grades of elementary school was 2343.6±586.1. 4) There were no differences in the number of steps in any of the classes between the higher-ranked and the lower-ranked children. These results suggest that from the perspective of fundamental movements and amount of physical exercise, creating various movements using traditional play physical activities as teaching materials may be satisfactory.
著者
久保 暁子 山本 清龍 中村 和彦 下村 彰男
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.33(2019年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.181-186, 2019-11-25 (Released:2019-11-22)
参考文献数
9

本研究では,ストレス軽減のためデジタル機器から一定期間離れる取り組みであるデジタルデトックスの基盤的な研究を企図して,①回答者の属性とデジタル機器の使用状況,デジタル機器の依存性を把握し,それらの関係性を明らかにすること,②平日・休日の過ごし方,デジタルデトックスへの意向を把握し,デジタルデトックスの可能性を考察すること,の2点を目的とした。その結果,約半数の学生がデジタル機器を4時間以上使用し,一部の学生は機器の使用によって学生生活に問題を抱えていた。学生の意向をふまえれば,日常の機器使用制限や自然豊かな場所への外出はデジタルデトックスに有効と考えられた。
著者
川上 ちひろ 西城 卓也 恒川 幸司 今福 輪太郎 中村 和彦
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.337-346, 2019-08-25 (Released:2020-03-20)
参考文献数
57

障害者差別解消法により, 医療者養成機関においても発達障害およびその特性がある学生への合理的配慮の提供が求められている. 合理的配慮とは, できる権利を保障するための配慮であり, 教育機関には提供の義務がある. 本稿では, 医療者養成機関における発達障害およびその特性がある学生の「入学」, 「在学中」, 「就職」の面から合理的配慮の考え方と, 具体的な支援について概説した. 発達障害およびその特性がある学生の支援においては, 明確な基準の提示, 教職員同士の連携・協働, さらに特性のある学生との関わり方の基本の理解が必要である.
著者
中村 和彦 井星 陽一郎 伊原 栄吉
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.11, pp.1889-1899, 2013 (Released:2013-11-05)
参考文献数
71

炎症性腸疾患(IBD)の発症に腸管での過度のT helper(Th)反応が関与している.Th反応はTh1,Th2,Th17からなり,正常の腸管では免疫反応を制御するregulatory T cellとの間でバランスが保たれている.IBD腸管ではその調節機構が破綻しており,クローン病ではTh1,Th17反応の亢進が,潰瘍性大腸炎ではTh17反応の亢進とIL-13発現上昇がみられる.IBD腸管のTh制御機構破綻のメカニズムを明確にすることは,治療のターゲットを明らかにし,新規治療法開発に重要である.IBDにおけるTh反応制御異常に関して最新の知見を含めて解説する.
著者
中村 和彦 秋穂 裕唯 牟田 浩実
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

炎症性腸疾患は腸に慢性の炎症を起こす難病で、腸での免疫応答の制御に異常があるとされる。制御性T細胞は免疫応答を抑制する細胞で炎症性腸疾患治療への応用が期待されている。近年、炎症性腸疾患ではT細胞を介した免疫応答の中でTh1型とTh17型反応の関与が示唆されている。制御性T細胞はTh1型大腸炎は抑制するが、Th17型大腸炎を抑制できるかどうか不明であった。本研究では、制御性T細胞がTh1型に加えてTh17型大腸炎を抑制できる事を示し、炎症性腸疾患にTh17型反応が関与していたとしても制御性T細胞が治療に応用できる事を示した。