- 著者
-
中村 和彦
- 出版者
- 日本グループ・ダイナミックス学会
- 雑誌
- 実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.2, pp.137-151, 2013 (Released:2013-03-09)
- 参考文献数
- 26
本研究の目的は,ラボラトリー方式の体験学習を用いた授業が大学生の対人的傾向やソーシャルスキルに及ぼす効果について,不等価統制群事前事後テストデザインによって検証することであった。加えて,体験学習のEIAHE'モデルに基づく「体験から学ぶ力」の個人差が,ラボラトリー方式の体験学習の効果に影響するかどうかについて検証することも目的とした。大学1年次の春学期にラボラトリー方式の体験学習を用いた授業を受講した対象者を実施群,同学年同学科で受講しなかった対象者を統制群とし,授業開始時期の4月と授業終了時期の7月に,対人的傾向やソーシャルスキル尺度,「体験から学ぶ力」評定尺度への回答を求めた。その結果,統制群に比べて実施群の対象者は,「自己発見動機」得点が有意に上昇することが明らかになり,ラボラトリー方式の体験学習は自己への気づきに対する動機づけを高めることが示された。また,実施群において「体験から学ぶ力」の自己評定が高い群は低い群に比べて,「ソーシャルスキル」合計得点とその下位尺度である「問題解決スキル」,「コミュニケーション・スキル」の得点が有意に上昇することが明らかになった。