著者
稲津 秀樹
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.185-202, 2012

本稿は, 国家間を移動する人びと/エスニシティのフィールドにおける出会いの過程に着目し, 調査者の<自己との対峙>を通じた問いを提出する意味と意義を考察した. 筆者の調査過程を振り返ると, 可視性に基づく問いと関係性に導かれる問いという2つの問い方が提出された. 前者では, 彼らと居合わせた空間における視覚の対象として捉えることで「外国人」として対象を措定し, 反対に自己を対象化せずに調査が行われる. このため調査者のまなざしが問われずに, 多様な関係性は「外国人」と「日本人」の二者関係へと集約され, 当の認識を生みだす場の力学自体が不問に付されていた. だが筆者は, 現場の人びとの関係性に導かれた場所での出来事から自己の存在論的な問い直しと共に, 彼らのことを「外国人」としてまなざす権力自体を捉え直す契機を与えられる. グローバル化により変容する「生きた人間同士の出会い」に立ち返り, その内実を上述の観点から再考することで, 彼らの存在を「外国人」として差異化する権力作動の問題を, 関係性が問われる場所の次元から批判的な議論の対象とする方向性が開かれる. その意義は, グローバル化がもたらす社会状況――多様な背景をもつ者が居合わせている「日常」――が在りつつも, なお成員間を差異化させる力とは何かという問いに対し, 結果としての二者関係認識を反復せずに越え出ていくような, フィールドワークの可能性と課題を導くからにほかならない.

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