- 著者
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山極 寿一
- 出版者
- The Anthropological Society of Nippon
- 雑誌
- Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
- 巻号頁・発行日
- vol.122, no.1, pp.76-81, 2014
人類学は,現在私たちが生きている社会や,それを維持するために必要な人間の特性が何に由来するのかを教えてくれる重要な学問である。人間の形態的特徴と同じく,社会の特徴も,人類の進化史の中に正しく位置づけないと,現在の人間の行動特性を誤って解釈することになる。たとえば,集団間の戦いは定住生活と農耕が登場してから発達したもので,人間の本性とは言えない。人間の高い共感能力は,捕食圧の高い環境で多産と共同保育によって鍛えられ,家族と共同体の形成を促した。その進化史を人間に近縁な類人猿と比較してみるとよく理解できる。最近の自然人類学の成果をぜひ高校教育に生かしてほしい。