- 著者
-
山極 寿一
- 出版者
- The Anthropological Society of Nippon
- 雑誌
- 人類學雜誌 (ISSN:00035505)
- 巻号頁・発行日
- vol.87, no.4, pp.483-497, 1979 (Released:2008-02-26)
- 参考文献数
- 14
- 被引用文献数
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ニホンザルの生体の外形特徴が,地域変異を示す有効な指標となりうるかどうかを検討するために,年令差,性差,側差,あるいは特徴間,母子間の関係等の各特徴のもつ属性を分析し,次の結果を得た。1)ニホンザルの外形特徴は,成長の初期段階に多様になり,各特徴の出現年令には著しい性差がある。また,加令に伴なう出現頻度の変化から,集団比較に用いられる資料の年令層を定めた。2)年令変化の大きい特徴は,すべて大きな性差を示した。3)左右聞,前後肢間には,白化爪以外のすべての特徴に有意な相関が認められた。4)特徴間の有意な相関は,オスでは11特徴の9組み合わせに,メスでは16特徴の10組み合わせに,認められた。5)有意な母子相関は20特徴中13特徴に認められ,性差のない特徴には母子相関の高い特徴が多い。6)ニホンザル亜種間の比較の結果,多くの特徴に有意な出現頻度差を認めた。各特徴の年令差,性差,他の特徴との相関等を考慮して資料を選択し,集団比較に用いれば,ニホンザルの地域差の検討にきわめて有効な手段であることを明らかにした。