著者
高橋 正也
出版者
National Institute of Occupational Safety and Health
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.23-30, 2014

労働者の安全と健康を確保するためには,労働の量的および質的側面の改善が必要である.現在でも,長時間労働の削減や職場の心理社会的環境の改善に向けて,多くの努力がなされている.このような職場の労働条件の向上に加えて,職場以外における過ごし方,特に余暇,を適正にすることは,労働安全衛生の水準をさらに高めるのに有益であると期待されている.最も基本的な余暇は終業後から次の勤務までの時間である.欧州連合の労働時間指令に示されているように,この時間間隔の確保はなにより重要であり,そこで行われる休養や睡眠の充実に不可欠である.同時に,労働に費やす時間の減少にもつながる.一日ごとの余暇活動の中でも,量的および質的に充分な睡眠は労働者の安全,疲労回復,健康維持に必須であることが実証されている.一方,週休二日制であれば,週末に二日間にわたる休日が得られる.こうした一週ごとの余暇を適切に過ごせると(例えば,長い朝寝を避ける),疲労回復には一定の効果がある.ただし,週内で蓄積した睡眠不足による心身への負担を完全に解消するのは難しいことに留意する必要がある.さらに,良好な睡眠を長年にわたってとれない状況が続くと,高血圧,心疾患,糖尿病,肥満などの健康障害が起こりやすくなるばかりか,筋骨格系障害や精神障害などの理由で早期に退職せざるをえない確率が2~3倍高まることが示されている.多くの労働者では,一生の中で労働者として過ごす時間はほぼ半分を占める.一生涯の生活の質を高めるためにも,労働時間の中,そして外の要因(余暇と睡眠)が最適化されなければならない.この課題を達成するには,行政,事業所,労働者個人それぞれの層で,余暇の見直しと根拠に基づいた実践が求められる.

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