著者
福岡 義隆
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.751-762, 1993
被引用文献数
1

まず始あに,最も古典的で著名ないくつかの文献と筆者自身の考えに基づいて,気候学と気象学の違いを論考する.気象学が人間不在でも成り立つ大気の科学であるのに対して,気候学は必ず人間の存在と密着した大気の科学であるとする.気候学をも含め自然地理学は,隣接の理工学の手法を取り入れるが,解析・理論的解釈の段階で人間的要素を色濃くもった地理学独自の哲学・思想が必要である.<br> それゆえに,気候学は自然地理学の一つ,あるいは地理学そのものとしての存在理由があるはずである.その存在理由は'Physical-Human Process.Response'と称するW. H. Terlungのシステム論における5番目のカテゴリーによって確信づけられる.筆者はそのようなcontrol systemの説明のために3っの具体的な気候学の研究例を紹介した.その一つはW. H. Terlungが論じているように"都市気候学"の研究である.ほかの一つは"災害気候学"に示され,そのうちの一つとして年輪に記録される干ばつの気候に関する研究を紹介した. 3つ目は"気候資源に関する研究"で,これも最も地理学的な気候学の一つと考えられる.というのは,それらの研究が自然エネルギー利用の伝統的方法における気候学的考えに拠るものであるからである.最後に,いつまでも他分野に仮住まいすべきではなく,気候学という現住所にいて地理学という本籍(本質)を全うすべきことを主張した.

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