著者
岩田 晃 中尾 栄治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.C0324, 2005

【はじめに】<BR> 高校野球選手にとって大会出場登録(いわゆるベンチ入り)できるか否かは非常に大きな関心事であるが、それらを分ける要因について基礎体力の側面からの検討はあまり行われていない。そこで、本研究では大会出場登録選手とそうでない選手の基礎体力を比較した。<BR>【対象】<BR> 大阪府下の私立高校の硬式野球部に所属する健常男子35名、身長171.2±5.2cm、体重64.6±9.9kgを対象とした。<BR>【方法】<BR> 基礎体力は、筋力、パワー、スピード、柔軟性の4つに分類し測定を行った。筋力は両側の握力、ベンチプレス、背筋力の3項目、パワーは立ち幅跳び、メディスンボール投げの2項目、スピードは30 m走、Tテストの2項目、柔軟性は投球側の肩外旋、両側の肩内旋、立位体前屈、上体反らし、両方向への体幹の回旋の5項目の合計12項目の計測を行った。<BR> 統計処理は、それぞれの項目について選手権地方大会出場登録選手17名とそれ以外の選手18名の2群に分け、対応のないt検定により2群間の平均値の差を検定した。また、有意差の認められた項目間で相互に相関の高い項目を除外し、学年の項目を加え説明変数とし、出場登録選手か否かを目的変数として判別分析を行った。<BR>【結果】<BR> 2群間における平均値の比較では、筋力、パワー、スピードの全項目おいて大会出場登録選手が有意に上回っていた。一方で、柔軟性に関しては立位体前屈のみ上回ったが、他の項目については有意差が認められなかった。また、2群間の判別に際し寄与の大きい項目は、30 m走、ベンチプレス、投球側の握力、立ち幅跳び、メディスンボール投げ、Tテスト、立位体前屈、学年の順であった。<BR>【考察】<BR> 柔軟性については立位体前屈の項目を除き大会出場登録選手とそれ以外の選手の2群間に有意差が認められなかった。また、立位体前屈についても判別関数係数が低値で2群間を分ける大きな要因とは言い難い。これらの結果から柔軟性が大会出場登録の可否を決定する重要な要因ではないことが明らかとなった。これは、野球という競技が、個々の動作を素早く行う必要があること、大きな可動域を用いて動作を行うことが少ないこと、筋には予備的負荷、予備的伸張を用いる際や、大きな力を発揮する際に最適な長さがあること、などから大きな可動域が必ずしも必要でないことが原因だと考えられる。<BR> 一方、筋力、パワー、スピードについては2群間の平均値に有意差が認められた。この結果から競技能力を上げるためには、積極的な筋力、パワー、スピードトレーニングが必要ということが明らかになった。

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