- 著者
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香川 真二
村上 仁之
前田 真依子
眞渕 敏
川上 寿一
道免 和久
- 出版者
- JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
- 雑誌
- 日本理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2006, pp.B0148-B0148, 2007
【目的】本研究の目的は、動作の熟練した頚髄損傷(頚損)者の身体感についての語りから、理学療法について再考することである。<BR><BR>【方法】サイドトランスファーが獲得されているC6完全麻痺患者に自らの身体についての半構造化インタビューを行い、得られた患者の主観的側面を解釈し、考察した。尚、対象者には本研究の趣旨を説明し、学会発表への同意が得られている。<BR><BR>【結果】インタビュー結果の一部を示す。<BR>Th:「怪我した直後の身体ってどんな感じ?」Pt:「頚から下の感覚が急に鈍くなったから、足の位置とか手の位置がよくわからんようになったり、自分の体をどう認識していいかわからへんようになってました。初めて車椅子に座った時は、座ってる感覚なかったかな。車椅子にこう、くくりつけられているような感じ。今は、この感覚のない身体でも、微妙に感じがわかるんですよ。だから、この感じが座ってるっていう感じって。だから体で覚えるとかじゃなくて頭で覚えんとしゃーないっすね」<BR>Th:「リハビリして動作が上手になっていく時ってコツみたいなのがあるの?」Pt:「突然じゃなくって、間違えたり正解したりとかを繰り返すのも必要なんかなって。成功ばっかりじゃダメで失敗したからそこに何かをみつけていくみたいな。そんな風にして自分たちが頚髄損傷になってから今の状態があるんかなーって」<BR><BR>【考察】「自分はこうである」といった確信は、個人としての主体が現実の秩序を疑ったり、確かめたりしながら築きあげたものであり、自分自身の「客観」や「真理」を保障するものである。今回の結果から、頚損者では受傷直後に自己の「身体状況」における確信が破綻していることが明らかとなった。さらに、「車椅子にくくりつけられているような感じ」といった「知覚」も変貌していた。つまり、受傷前までほぼ一致してきた「身体状況」と「知覚」が一致しない状態に変化している。この不一致が動作獲得の阻害因子の一つになっていると考えられた。そして、動作が獲得されるためには失敗と成功の中に表れる「身体状況」と「知覚」の関係性から、何らかの秩序を見つけていく必要がある。理学療法においては、まず「身体状況」と「知覚」の一致を目的に運動療法を行わなければならない。そのためには、「身体状況」と「知覚」をひとつずつ確かめながら体験的に認識することが必要となる。具体的には、セラピストが言語により動作の内省を「問い」、患者は自己の身体で知覚されたことを言語で「表象」する。セラピストの支援で構造化されていく語りの中で、患者自身の体験が意味づけられ、「身体状況」と「知覚」の関係性を学習し、新たな身体における確信が再構築されると考えられる。<BR>