著者
青木 修 香川 真二
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.491-494, 2008 (Released:2008-10-09)
参考文献数
14

[目的]変形性膝関節症(以下,膝OA)患者の膝関節位置覚は健常高齢者に比べ低下しているかを検討した。また膝OA患者に対し,局所圧迫を加える膝装具が位置覚に与える影響を検討した。[対象]対象は膝OA患者20名,健常高齢者20名であった。[方法]測定は角度測定ができるよう改良した持続的他動運動装置を用い,膝OA患者および健常高齢者の位置覚を測定した。膝OA患者に対してはさらに,膝装具を装着した状態でも位置覚を測定した。[結果]膝OA患者は健常高齢者に比べ,位置覚は低下していた。膝OA患者は装具装着により位置覚の改善がみられた。[結語]膝OA患者では装具装着により位置覚が改善するという,限局的な面においては装具が有効であることが示された。
著者
香川 真二 千田 廉 木村 愛子 前田 真依子 米田 稔彦 星 信彦 岡田 安弘
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.C0457, 2006

【目的】<BR>近年、歩行解析に三次元加速度計が広く利用されている。しかし、定量的な加速度解析や歩行周期の特定に関する報告は少ない。そこで、三次元加速度センサとデジタルカメラ映像を同時にパーソナルコンピューター(以下、PC)へ記録できるシステムを用いて、腰背部に取り付けた加速度データと歩様の関係を詳細に検討した。さらに、健常者と変形性股関節症(股OA)患者の加速度変化をリーサージュ図形により可視化し、各方向へのバランス評価を行った。また、各軸の加速度変化を周波数解析し、OA患者と健常者間の定量的な比較を行った。<BR>【方法】<BR>20人の健常者(平均年齢: 62.2)と20人のOA患者(平均年齢: 58.3)を対象とした。全ての対象者に研究趣旨を説明し同意を得た。被験者全てに腰背部中央に無線型加速度センサ(サンプリング周波数:600Hz, Microstone)を取り付け、さらに、主要関節部位に発泡スチロール製マーカー(直径: 3 cm)を装着し、自由歩行として約20mの歩行をサンプリングした。加速度センサデータと歩行動作画像は同時にデジタル化しPCへ記録した(Digimo)。<BR>【結果】<BR>加速度変量のピークと各歩行動作は単純には一致せず、個体間でも共通した傾向は見られなかった。しかし、健常者およびOA患者とも左右・上下での加速度がmid stance時に0に近い値を示し、この時点において「等速状態」であることが示された。PC上に加速度変量をリサージュ図形として可視化し、左右、前後および上下のバランスを視覚的かつ定量的に比較した。OA患者は左右・上下・前後とも健常者より、不規則かつ大きく変動した。2次元の加速度で合成される2次元ベクトル値(スカラー)の総和平均を比較すると、OA患者は健常者より有意に増加していた(p<.01)。mid stance時を基準にし、Fast Fourier 変換 (FFT)を用いて、加速度のパワースペクトルを算出した。OA患者における左右および前後方向での高周波領域(5-20Hz)のパワー値は、健常者より有意に高い値を示した(p<.05)。<BR>【考察】<BR>今回の結果から三次元加速度計波形の左右・上下成分加速度よりmid stanceの特定が可能となり、mid stanceを起点として歩行解析を行うことが、定量的解析方法の基準となることが期待される。加速度変化の可視化により、視覚的に歩様バランスを判断できる可能性も示唆された。患者への説明用データとしても有用であると考える。左右・前後成分でOA患者の高周波領域のパワー値の有意な増加は、体幹・骨盤の挙動を代表した異常歩行と関係することが示唆される。定量的加速度波形解析は、時間的変化を比較できることから、リハビリ過程の評価の一つとして有効であると考えられる。
著者
香川 真二 村上 仁之 前田 真依子 眞渕 敏 川上 寿一 道免 和久
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.B0148-B0148, 2007

【目的】本研究の目的は、動作の熟練した頚髄損傷(頚損)者の身体感についての語りから、理学療法について再考することである。<BR><BR>【方法】サイドトランスファーが獲得されているC6完全麻痺患者に自らの身体についての半構造化インタビューを行い、得られた患者の主観的側面を解釈し、考察した。尚、対象者には本研究の趣旨を説明し、学会発表への同意が得られている。<BR><BR>【結果】インタビュー結果の一部を示す。<BR>Th:「怪我した直後の身体ってどんな感じ?」Pt:「頚から下の感覚が急に鈍くなったから、足の位置とか手の位置がよくわからんようになったり、自分の体をどう認識していいかわからへんようになってました。初めて車椅子に座った時は、座ってる感覚なかったかな。車椅子にこう、くくりつけられているような感じ。今は、この感覚のない身体でも、微妙に感じがわかるんですよ。だから、この感じが座ってるっていう感じって。だから体で覚えるとかじゃなくて頭で覚えんとしゃーないっすね」<BR>Th:「リハビリして動作が上手になっていく時ってコツみたいなのがあるの?」Pt:「突然じゃなくって、間違えたり正解したりとかを繰り返すのも必要なんかなって。成功ばっかりじゃダメで失敗したからそこに何かをみつけていくみたいな。そんな風にして自分たちが頚髄損傷になってから今の状態があるんかなーって」<BR><BR>【考察】「自分はこうである」といった確信は、個人としての主体が現実の秩序を疑ったり、確かめたりしながら築きあげたものであり、自分自身の「客観」や「真理」を保障するものである。今回の結果から、頚損者では受傷直後に自己の「身体状況」における確信が破綻していることが明らかとなった。さらに、「車椅子にくくりつけられているような感じ」といった「知覚」も変貌していた。つまり、受傷前までほぼ一致してきた「身体状況」と「知覚」が一致しない状態に変化している。この不一致が動作獲得の阻害因子の一つになっていると考えられた。そして、動作が獲得されるためには失敗と成功の中に表れる「身体状況」と「知覚」の関係性から、何らかの秩序を見つけていく必要がある。理学療法においては、まず「身体状況」と「知覚」の一致を目的に運動療法を行わなければならない。そのためには、「身体状況」と「知覚」をひとつずつ確かめながら体験的に認識することが必要となる。具体的には、セラピストが言語により動作の内省を「問い」、患者は自己の身体で知覚されたことを言語で「表象」する。セラピストの支援で構造化されていく語りの中で、患者自身の体験が意味づけられ、「身体状況」と「知覚」の関係性を学習し、新たな身体における確信が再構築されると考えられる。<BR>