- 著者
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磯邊 恵理子
山本 かおり
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2006, pp.E1063, 2007
【目的】訪問リハビリテーションは、対象者の自宅に訪問することで生活状況や介護状況に直接関わるという個別性をもった対応が必要とされるサービスである。しかし、介護者と対象者の思いに大きな相違が生じその相違をどのように調整していけばよいか戸惑うことも多々経験する。今回、介護者の機能改善に対する思いが強く対象者への暴力も認められ、リハビリ支援に苦難した症例を経験したので、訪問リハビリの役割や今後の課題について検討する。<BR><BR>【症例紹介】60代 男性 脳梗塞(右片麻痺)、糖尿病、糖尿病網膜症(左眼失明)要介護度1 視力障害はあるがてすりや杖使用での歩行可能。家族構成は本人・妻・長男の三人暮らし キーパーソンは遠方在住の次女であり介護のために月の半分は帰省。症例性格:発症前は会社経営をしており自由自適に生活。利益を得ることや金銭欲が強く身勝手な行動や発言が多い。訪問リハビリ導入は家族の希望によるものであり、筋力強化、ADLの向上等機能改善希望。<BR><BR>【経過】H14.7訪問リハビリ週3回(別事業所からも週3回)導入となる。本人の行動:病識なくリハビリ意欲に欠ける。しかし外出意欲は高く次女不在時は一人で外出、暴飲暴食など血糖コントロール困難。次女の行動:症例の勝手な行動に対しストレスを感じ、神経質で生活スケジュールの細部までマネジメントを行う。また機能訓練に対しての意欲強く内容や量に関する訴え多い。訪問リハビリ実施の際にもスタッフ以上に動作手順の指示があり症例の行動に対して細かい指示をされ口調も激しく出来ないと怒り何度も修正を要求。経過中の出来事:訪問リハビリ導入当初から次女による厳しい介護状況が認められたが、介護ストレス蓄積によりスタッフの目前でも暴力的行為が目立つようになった。対策:虐待行為への対応としてサービス導入による介護負担の軽減、介護者の話の傾聴による精神的支援、虐待についての説明、虐待行為が生じた時点でサービス提供中止、という内容をケアマネと取り決め実施した。<BR><BR>【結果】虐待行為に対しスタッフ間での話し合いや関連職種との連携も頻回に行ったが大きな改善を認めることなくH18.3から痙攣発作により入院となり訪問リハビリ中止、現在は機能低下(臥床)した状態で在宅生活中。<BR>【考察】対象者の尊厳を守るために本人の意思の尊重をすべきであるが、高齢者虐待や介護虐待は発見しにくく介入も困難であるといわれている。今回改善させることが出来なかった背景には症例本人による否定、介護者の症例に対しての思いの強さ、家族の生活歴の存在等があげられる。対象者、介護者間のニーズの違いに対しては専門職として助言し調整していかなければならないが今回は介護者主体の関わりであった。今後は関係職種とさらに連携を図りながら在宅で生じる問題点に対し対応をしていかなければならない。