著者
蛭間 基夫 鈴木 浩
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.E0728, 2008

【はじめに】高齢者を対象とした住宅改善支援は介護保険によって全国統一した仕組みで実施されている.ただし,一制度のみでは高齢者の多様なニーズに十分対応しきれない例も少なくない.このような例を補完するには自治体独自の支援制度の整備・拡充が期待される.しかし,このような制度の実態調査はこれまで大規模自治体や東京都特別区あるいは制度の利用実績のある自治体に限定され,地方都市を対象としたものは少ない.本報告の目的は高齢者の住宅改善に対して質の高いサービス提供のために有効な自治体独自の住宅改善費用支援制度の実態を明らかにし,今後の活用を促進する一助とすることである.<BR>【方法】調査対象は東北6県内全63市である(02年度時点).調査は質問紙によるアンケート票を郵送にて配布・回収している.期間は02年8月から2ヶ月で,回収率81.0%である.<BR>【結果】(1)高齢者や障害者を対象とした独自の費用支援制度を整備しているのは42市(82.0%)で,これら42市で費用支援制度の合計は77制度(補助制度46制度,融資制度31制度)である.費用の補助制度を整備しているのは37市(72.5%),融資制度は24市(47.1%)である.両制度を同時に整備しているのは19市(37.3%)である.独自制度が整備されてないのは9市(17.6%)で,このうち整備していた制度を中止した・中止予定とする3市(5.9%)が含まれている.(2)制度の実態として対象者規定では心身機能低下を有する者とした制度が50制度(64.9%)で,反対に低下のない者とした制度は27制度(35.1%)である.(3)制度利用の制限規定としては46助成制度では障害等級(76.1%),回数制限(76.1%),所得制限(73.1%),介護保険との併用不可(39.1%)が上位で,31融資制度では障害等級(45.2%),家族形態(38.7%),納税完済(38.7%)である.(4)制度の利用実態について助成制度の助成限度額は「25万円未満」が23制度(50.0%)で最多である.また,過去3年間の平均利用件数は「1-9件」が最多で18制度(43.9%)である.過去3年間の1件当たりの平均助成額は99年度58.8万円,00年度49.5万円,01年度31.2万円である.<BR>【考察】東北6県内市部の支援制度の整備状況は先行研究で報告されている大都市部の実態と比較すると低い傾向を示し,経済基盤の大きい自治体ほど制度化しやすい傾向を示唆している.また,融資制度が制度として整備されているが,経済能力が不安定な者では利用が難しい内容となっている.助成制度であれば経済能力が不安定な者であっても利用できるが,実際の利用率は低く,年々助成額も低下傾向にある.本報告は調査時期から5年以上経過し,その間介護保険も改正されている.従って,現状を反映した結果とは位置づけられないが,今後の実態を明らかにする上で比較検討の対象になると考えられる.<BR>【まとめ】東北全市を対象として住宅改善費用支援制度について調査を行った.制度は整備されているが利用実績が少ないことが明らかになった.

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