著者
角田 友紀 蛭間 基夫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.203-208, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
11

〔目的〕住宅改善での理学療法士(PT)の自宅訪問が不十分と指摘がある.そこで,本報告では自宅訪問を規定する要因を明らかにした.〔対象〕PT協会から無作為抽出した全国のPTの中の介入経験者1,163人とした.〔方法〕質問紙による調査を2010年8月から2ヵ月行った(回答率40.3%).介入者の訪問状況から必ず行う必須群(47.5%),事例により行う事例群(47.6%),訪問経験がない非訪問群(3.7%)の三群に分類し勤務機関の実態や介入する具体的支援についてクロス集計により比較した.〔結果〕必須群では勤務機関は訪看や老健が多く,日常業務の主対象は在宅生活者や維持期患者が多かった.〔結語〕自宅訪問が可能なPTとの連携を確保する重要性が示唆された.
著者
蛭間 基夫 鈴木 浩
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.E0728, 2008

【はじめに】高齢者を対象とした住宅改善支援は介護保険によって全国統一した仕組みで実施されている.ただし,一制度のみでは高齢者の多様なニーズに十分対応しきれない例も少なくない.このような例を補完するには自治体独自の支援制度の整備・拡充が期待される.しかし,このような制度の実態調査はこれまで大規模自治体や東京都特別区あるいは制度の利用実績のある自治体に限定され,地方都市を対象としたものは少ない.本報告の目的は高齢者の住宅改善に対して質の高いサービス提供のために有効な自治体独自の住宅改善費用支援制度の実態を明らかにし,今後の活用を促進する一助とすることである.<BR>【方法】調査対象は東北6県内全63市である(02年度時点).調査は質問紙によるアンケート票を郵送にて配布・回収している.期間は02年8月から2ヶ月で,回収率81.0%である.<BR>【結果】(1)高齢者や障害者を対象とした独自の費用支援制度を整備しているのは42市(82.0%)で,これら42市で費用支援制度の合計は77制度(補助制度46制度,融資制度31制度)である.費用の補助制度を整備しているのは37市(72.5%),融資制度は24市(47.1%)である.両制度を同時に整備しているのは19市(37.3%)である.独自制度が整備されてないのは9市(17.6%)で,このうち整備していた制度を中止した・中止予定とする3市(5.9%)が含まれている.(2)制度の実態として対象者規定では心身機能低下を有する者とした制度が50制度(64.9%)で,反対に低下のない者とした制度は27制度(35.1%)である.(3)制度利用の制限規定としては46助成制度では障害等級(76.1%),回数制限(76.1%),所得制限(73.1%),介護保険との併用不可(39.1%)が上位で,31融資制度では障害等級(45.2%),家族形態(38.7%),納税完済(38.7%)である.(4)制度の利用実態について助成制度の助成限度額は「25万円未満」が23制度(50.0%)で最多である.また,過去3年間の平均利用件数は「1-9件」が最多で18制度(43.9%)である.過去3年間の1件当たりの平均助成額は99年度58.8万円,00年度49.5万円,01年度31.2万円である.<BR>【考察】東北6県内市部の支援制度の整備状況は先行研究で報告されている大都市部の実態と比較すると低い傾向を示し,経済基盤の大きい自治体ほど制度化しやすい傾向を示唆している.また,融資制度が制度として整備されているが,経済能力が不安定な者では利用が難しい内容となっている.助成制度であれば経済能力が不安定な者であっても利用できるが,実際の利用率は低く,年々助成額も低下傾向にある.本報告は調査時期から5年以上経過し,その間介護保険も改正されている.従って,現状を反映した結果とは位置づけられないが,今後の実態を明らかにする上で比較検討の対象になると考えられる.<BR>【まとめ】東北全市を対象として住宅改善費用支援制度について調査を行った.制度は整備されているが利用実績が少ないことが明らかになった.
著者
岡田 真衣 角田 友紀 蛭間 基夫
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101831-48101831, 2013

【はじめに】2000年に施行した介護保険により要介護認定者を対象とした住宅改修が全国で統一的に受給できるようになった.しかし,一方で改修内容は6項目に限定されており, 多様なニーズに対応するため,基礎自治体による費用支援制度の整備が求められる.ただし,この自治体による費用支援制度の実態調査は人口規模の大きい市区に限定され,町村を対象とするものは少ない.また,自治体による費用支援制度の実態調査は建築分野における報告は多いものの,理学療法士をはじめとする医療技術者による報告は少ない.【目的】本報告では自治体による費用支援制度の整備状況を把握することを目的として,関東甲信越地方を対象として調査を実施した.【方法】対象は関東甲信越地方1都9県の全452市区町村で,質問紙によるアンケートを実施した.調査票の配布,回収は郵送またはFAXで行った.全452自治体のうち263自治体(有効回収率58.3%)から回答を得た.回答が得られた自治体のデータは住宅改修に要した費用の助成及び融資制度について,市区(158自治体)と町村(105自治体)に分け,クロス集計を用いて分析した.調査期間は2012年4月7日から2週間であった.【倫理的配慮,説明と同意】自治体に対して調査票とは別に研究の目的,方法及び個人情報の取り扱い等を記した書面を同封し,返信をもって研究参加に同意があるとして調査を行った.【結果】(1)制度の整備状況:市区,町村とも「助成制度あり」の割合が最も高く,整備率は市区88.6%(140自治体),町村74.3%(78自治体)である.また,「融資制度あり」の整備率は市区24.1%(38自治体),町村1.9%(2自治体)である.「両制度あり」の割合は市区21.5%(34自治体),町村1.9%(2自治体)である.また,いずれの制度も整備されていない割合は,市区8.9%(14自治体),町村25.7%(27自治体)である.(2)助成制度の整備数:各市区町村における助成制度の整備数は,「1制度のみ」の割合が最も高く,市区77.9%(109自治体),町村85.0%(68自治体)である.「複数制度あり」は市区22.1%(31自治体),町村15.0%(12自治体)である.(3)助成制度の制限内容:制度の利用対象者は「障害のある者」とする割合が最も高く,市区69.6%(190助成制度),町村70.5%(93助成制度)である.障害の程度に関する規定は「障害者手帳」による割合が高く,市区56.8%(108助成制度),町村61.3%(57助成制度)であり,次いで「要介護認定」による割合が高く,市区43.2%(82助成制度),町村38.7%(36助成制度)である.年齢による規定では,年齢による「規定なし」とする割合が高く,市区53.8%(147助成制度),町村61.4%(81助成制度)である.年齢制限を設けている場合には「65歳以上」とする規定が最も高く,市区86.5%(109助成制度),町村82.4%(42助成制度)である.(4)融資制度の整備数:融資制度は町村の整備数が少ないため,以下市区と同時に記載する.市区町村における融資制度の整備制度数は,「1制度のみ」の割合が最も高く,87.5%(35自治体)である.「複数制度あり」は12.5%(5自治体)である.(5)融資制度の制限内容:制度の利用対象者は,障害による「規定なし」とする割合が高く, 80.4%(37融資制度)である.「障害のある者」とする割合は,41.3%(19融資制度)である.障害の程度に関する規定は「障害者手帳」による割合が高く,73.7%(14融資制度)であり,次いで「要介護認定」による割合が高く,21.1%(4融資制度)である.年齢による規定では,年齢による「規定なし」とする割合が高く,73.9%(34融資制度)である.年齢制限を設けている場合には「65歳以上」とする規定が最も高く,92.3%(24融資制度)である.【考察】本調査では人口規模に関係なく市区及び町村において,助成制度の整備が同水準で進んでいるが,融資制度では整備率が市区に対して町村が低い傾向にあった.つまり,現在の我が国の自治体による住宅改修の費用支援が助成制度を中心としていることが明らかになった.様々なニーズを有する利用者に対応するためには,複数の制度が整備されることが望ましい.しかし,支援額が高額になる融資制度は,人口規模が小さく財源が限られる町村では整備が難しいと考えられる.また,利用者にとっても返済する義務があるため,経済的負担が大きく,利用が難しい制度である.助成制度の内容を検討すると制度利用者に関しては何らかの障害を有する65歳以上の者を対象としているものが多い.これは介護保険による住宅改修と対象者が重複するものであり,これは介護保険では対応しきれない利用者のニーズを補足する制度となる可能性もあるが,本調査では各制度の具体的な内容について明らかにできていない.従って,各制度の内容を調査し,介護保険との関連性について検討する必要性が示された.【理学療法学研究としての意義】本研究の結果から,住宅改修において重要な役割を有する理学療法士に対して自治体による費用支援制度の啓発の契機となり,今後の制度の利用促進に貢献する可能性がある.