著者
香川 雄一
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.46-46, 2004

栃木県旧上都賀郡鹿沼町の「歳入歳出決算書」と「町会会議録」を中心とした行政資料を読み解くことによって、地方財政をめぐる政治過程が予算から決算に至るまでの金額の更正に、いかにして作用しているかを明らかにする。町制を施行した直後の明治20年代には1万人に満たなかった鹿沼町の人口は、大正期に入ると1万5千人を越えるようになる。鹿沼町では明治23年に鉄道の日光線が開通し、帝国製麻株式会社の主力工場も存在していたため、一時的な増減はあるにせよ、人口は増加傾向を示していた。とくに大正期は工場の増設による工業化を主導として、町の内部に都市化をもたらすことになった。大正9年の国勢調査による職業分類別人口を見ても、商業を抑えて工業が第一位部門となっている。工場労働力の流入など、人口が増えることによって必要となるのは住宅である。一方で若年人口の増加は義務教育体制下にあって、学校の増改築を不可避のものにすることになった。 鹿沼町における学校建設費用による財政規模の急変は決算額の推移によって裏付けられる。明治28年度は学校建設のための寄付金によって、歳入額が前年度の倍以上となる。明治35年度と36年度は校舎建築費と復旧費で決算総額が再び急増する。42年度以降も毎年多額の学校建設費が予算化され、翌年度以降の歳出増加を導いている。大正期に入っても前半はそれほど変化していないが、大正9年度以降は急激に財政規模を膨張させる。これもやはり小学校改築費用のためであり、町債によって準備された金額が大正10年度には多額の繰越金として歳入に組み込まれ、歳出では小学校改築費に使われた。学校の改築や新築といった建設費用に町の財政が苦心していたことはひとまず確認できた。財政規模の拡大により、町有財産を充実させてきたのも事実である。財政に取り組む政治過程が行政施策の方向性を定めてきたことが理解できる。

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こんな論文どうですか? 栃木県旧上都賀郡鹿沼町における地方財政の政治過程(香川 雄一),2004 https://t.co/ZCOjhwnZu6
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