著者
山近 博義
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.49-49, 2004

本発表の目的は、江戸時代中期に刊行京都図で一画期を築いた、林吉永による「京大絵図」の特徴を整理し、同時代の京都やそれをとりまく様々な状況との関係で考察することにある。その結果、「京大絵図」は、全体的図様等から、1.貞享3(1686)年図から元禄、正徳年間の図、2.正徳2~4(1712~14)年図から享保年間の図、3.寛保元(1741)年図以降の図の3タイプに整理できることがわかった。タイプ1からタイプ2への変化は、京都から各地への里程等を示す起点が「一条札辻(一条室町)」から「三条大橋」に変わった点、伏見など郊外の描写がより詳細になった点に認められる。タイプ2からタイプ3への変化は、この傾向をより進めるとともに、三条通を境に南北2分割の図になった点をあげることができる。タイプ3は2分割図になり南北方向にゆとりが生じたため、描写される京都の市街地にみられるゆがみが3つタイプの中で最少となった。このような変化の中で、タイプ1からタイプ3へと継続してみられる里程の起点の変化および郊外のより詳細な描写という点は、京都への入洛者の視点をより重視したことに関係していると考えられる。それは、図中で重視される三条大橋や伏見といった場所が、同時代の京都と周辺のとのつながりにおいて重要な場所となっていたからである。また、郊外の描写重視という傾向は、タイプ1と同じ版型の一枚図のままでは、様々な無理やゆがみを生じさせることとになる。このような問題点を解決するために、タイプ3の2分割図が考案されたとも考えられる。

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