- 著者
-
堀内 孝
- 出版者
- 日本認知心理学会
- 雑誌
- 日本認知心理学会発表論文集
- 巻号頁・発行日
- vol.2011, pp.25, 2011
一般的に自分自身の名前に関する反応時間は短いことが知られている。本研究では,その処理の速さが自己名前の熟知性の高さに起因しているのか否かを検討した。具体的には,名前を繰り返し提示することによりその熟知性の高さを操作した。実験1では,自己名前と3人の他者(親友,男性有名人,女性有名人)の名前が設定され,4回の反復提示が行われた。1回目の反応時間は,自己<親友<男女有名人であった。これは従来の研究知見と一致するものであり,熟知性でも解釈可能な結果である。しかしながら,4回目では他者3名間の反応時間の差は消失したにもかかわらず,自己名前は他者3名の名前よりも反応時間が短かった。さらに,実験2では自己名前と親友の名前が設定され,30回の反復提示が行われたが,それでも,自己名前は親友の名前よりも反応時間が短かった。以上の結果は,自己名前に関する処理の速さは熟知性の高さでは説明できないことを示している。