- 著者
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川島 理恵
- 出版者
- The Japan Sociological Society
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.4, pp.663-678, 2013
- 被引用文献数
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救急医療における意思決定過程は, 代理としての家族が意思決定に参加し, 刻々と変わる状況下でなにかを決めなければならない. そこで医師と家族がよりどころとするのは, 会話という手段にほかならない. 本稿では, 患者家族が救急初期診療中に医師から説明を受ける場面を, 会話分析によって分析し, その相互行為上の仕組み, いわばインフォームド・コンセントが裏づけられていくプロセスを明らかにする. それにより医師-患者関係におけるインフォームド・コンセントの的確な運用に関する議論に寄与することを目指す.<br>分析の結果, おもに3つの相互行為的な仕組みが主軸となり意思決定過程が組み立てられていた. (1)まず医師の状況説明が物語りとして組み立てられることで, 徐々に悪いニュースが明らかとなり, 家族が患者の死を予測できる構造になっていた. (2)また医師は, 視覚や触覚で得られる情報を参照することで不確実な状態を, 刻々と確実なものに変化させていた. (3)さらに状況説明とは逆接的な提案が繰り返された後, 最終的な局面では, 医師の提案が, 家族の反応にきわめて敏感に組み立てられていた. このように家族が受け入れやすいかたちで説明・提案を行うことは, 医師の示す治療方針, ひいては医師の権力自体を正当化する手だてとなっていた.