- 著者
-
齊藤 史哲
- 出版者
- 公益社団法人 日本経営工学会
- 雑誌
- 日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.1, pp.39-48, 2015
サプライチェーン上で生じる様々な問題の原因の一つとしてブルウィップ効果が挙げられる.ブルウィップ効果とは,サプライチェーンにおける需要変動が上流に上るにつれて増大するという現象の総称である.サプライチェーンを構成する全企業で最終需要の情報を共有することで,この現象を抑制できることが知られている.しかし,全企業で最終需要に関する情報を共有することや,複数の商品や複数の取引相手に対するその情報を適切に扱うことは困難であり,全体で情報を共有するモデルの適用は現実的ではない.そこで,本研究では各企業が直接の取引相手とのコミュニケーションを通じて知識を共有することにより,ブルウィップ効果を抑制する方法を提案する.本提案では上流側の企業は一段階前で協業する取引相手に関する在庫や発注量のデータ(情報)を共有し,そのデータと発注量との関連性に関するモデル(知識)を構築することで,取引相手との知識共有を実現する.これにより,各段階での需要量と発注量のズレを縮小させることができるため,ブルウィップ効果の抑制が期待できる.提案法の有効性を検証するために,計算機実験を通じて評価を行った.