- 著者
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羽鳥 剛史
二神 透
- 出版者
- Society for Science and Technology
- 雑誌
- 科学・技術研究 (ISSN:21864942)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, no.1, pp.77-82, 2015
本研究では、自然災害に関わる想定の限界についての認識不足を「メタ無知」と呼称し、地震災害を対象として、人々がどのような想定意識を有し、その想定をどのように評価しているかを明らかにし、メタ無知の傾向を実証的に把握する。この目的の下、南海地震に関連する事柄・事象として①地震震度、②津波高さ、③建物倒壊、④建物焼失、⑤人的損失、⑥土木施設損壊、⑦ライフライン施設損壊を取り上げ、愛媛県八幡浜市の住民324名を対象に、これらの災害事象に関する想定意識とその想定を超える事態に対する意識について調査を実施した。その結果、地震災害の規模やそれによって生じる諸事態の可能性を過小に想定している人ほど、その想定の限界を認識していない傾向が確認された。以上の結果は、認知心理学におけるDunning=Kruger効果と整合的であり、地震災害に関わる想定意識の低い人は、それにも関わらず、自分の想定の低さを感知していないという意味において、メタ無知に陥っている可能性を示唆している。最後に、自然災害による被害を軽減する上で、本研究の結果が示唆する点について考察した。