著者
鈴木 利雄 川治 健一 関口 理希 石川 智士 伊藤 智博 立花 和宏
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.123-1128, 2016 (Released:2016-07-07)

関東大震災をきっかけに固定電話網の整備のためにダイヤル式電話機と自動交換機の技術のニーズは生まれ、黒電話が産声を上げた。終戦を経て高度成長期に黒電話の完成版600型が世に姿を表した。電電公社がダイヤル自動化100 %を目指す中、日本はオイルショックの狂乱物価に見舞われた。黒電話の製造コストを下げるため、完成されたと言われた黒電話600型をさらに改善することを余儀なくされた。山形大学工学部電気工学科を卒業して間もない鈴木を中心として山形県米沢市の田村電機で黒電話601A型ダイヤル開発が行われた。新しく開発された黒電話601A型は日本の家庭を電話で隅々までつないだといっていい。本稿はその開発の状況がいかがなものであったか時代背景とともに書き残すものである。
著者
荻原 祐二
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.149-158, 2017 (Released:2018-01-06)

本稿では、近年の日本における成果主義制度導入状況の経時的変化を分析した。個人の短期的で顕在的な成果・業績に基づいて評価・処遇を行う成果主義制度が、1990年代から日本において導入されてきた。しかし、成果主義制度導入の近年の状況と、その変化の境界条件・調整要因(職層や企業規模)、そして成果主義制度を構成する制度間の経時的変化の違いは十分に明らかでなかった。日本における企業活動の歴史と現状を客観的に把握し、経営・経済制度と相互に影響を与え合っている人々の心理・行動の変化を理解するためにも、これら3点を含めて成果主義制度導入状況の経時的な変化を明らかにする必要がある。そこで本稿では、日本生産性本部と厚生労働省が、1991年から2016年まで継続して実施している2つの大規模な調査を用いて分析を行った。その結果、2つの調査で一貫して、1996年から2016年にかけて、年齢や勤続年数に基づいて評価・処遇を行う年功制を導入している企業の割合は低下していた。さらに、1991年から2014年にかけて、労働者の短期的な業績に応じて賃金を年単位で設定する年俸制を導入している企業の割合及び適用労働者の割合は増加していた。年功制の低下と年俸制の増加は、職層と企業規模に関わらず、広範囲の企業及び労働者において見られた。よって、ここ約30年で成果主義制度は、様々な企業の多様な労働者を対象にして、より広範に導入されるようになっていることが明らかとなった。一方で、企業規模が大きいほど、年功制の導入率の低下が大きく、年俸制の導入率の増加が大きかった。また、管理職において年俸制の導入率の増加が大きかった。さらに、年功制の導入率は1990年代から2010年代まで直線的に減少し続けている一方で、年俸制の導入率は1990年代から2005年頃までは増加し続けているが、2005年頃以降は単調な増加傾向を示していなかった。
著者
松本 和也 羽鳥 剛史 竹村 和久
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.165-172, 2015 (Released:2015-12-25)

本研究の目的は、オルテガの論ずる「大衆」とウェーバーの論ずる「官僚制」の概念を用い、今日の我が国における官僚批判の心理構造について実証的に検討することである。この目的の下、大衆性を測定する大衆性尺度及び官僚制化に関わる形式性追求傾向尺度、政治・社会の官僚制化に関わる態度指標を用いたアンケート調査(n = 400)を行い、これらの関連を調べた。その結果、大衆性尺度と形式性追求傾向尺度との間に正の関連性が示され、大衆性の高い個人ほど、マニュアル等の形式性を追及する傾向にあることが示された。また、大衆性と政治の官僚制化に関わる態度の関係性として、傲慢性と吏員型官僚支持意識との間に正の関連性が、自己閉塞性と政治的官僚支持意識との間に負の関連性が示された。さらに、大衆性と社会の官僚制化に関わる態度の関係性として、傲慢性と社会の官僚制化に関わる態度との間に総じて正の関連性が示された。最後に、本研究の結果が大衆による官僚制化の弊害を抑止する上で示唆する点について考察を行った。
著者
二宮 隆次 小野 浩幸 高橋 幸司 野田 博行
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.93-104, 2016 (Released:2016-07-07)

本研究では、産学官連携の現場の諸活動について、大量の質的(定性的)データを基に計量的分析を実施し、可視化した情報として提供することを試みた。具体的には、日経産業新聞の連載記事「ベンチャー仕掛け人」を、テキストマイニング手法「KH Coder」を用いて分析した。その結果、①大学の共同研究センター等を中心とした産学官連携活動、②インキュベート施設を中核とした活動、③資金に関するベンチャーキャピタルや金融機関を中心とした活動、のそれぞれの活動において、出現する言葉に特徴があることが明らかになった。また、特徴的な3つのグループにプロットされた語から特定語を選択して共起分析した結果、①の「産学」による分析では、研究、開発、技術および連携の4つ語が強く共起関係を結び、加えてそれぞれの語がほかの関連語とネットワークを結び、産学官連携の活動パターンを形成していることが確認できた。②の「施設」と「入居」による分析では、主たる活動は起業、事業を育成することであることが見て取れた。施設と入居の語の共起分析から、施設には入居タイプと入居がないものがあり、入居は技術、経営の語の共起関係が比較的高く、施設は、地域、開発および相談が高いことがわかった。③の「上場」と「ファンド」による分析では、起業・研究フェーズでの事業の元手となる出資やベンチャーキャピタル、実用化・会社設立フェーズでのファンド・株式、事業経営の維持・拡大フェーズでの銀行等金融機関の融資などが共起していることが確認された。以上のことから、本研究は、産学連携活動を効率的、かつ、効果的に実施するうえで重要な情報を提供しうるものと考えられる。
著者
宮下 知也 横田 正 木戸 康嗣 岡村 拓哉 飯島 陽子 鈴木 英之 柴田 大輔 衛藤 英男
出版者
Society for Science and Technology
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.95-100, 2015

我々は緑茶を亜臨界水抽出130℃で処理することで高濃度カテキン含有でありながら苦渋味を抑制した緑茶飲料になることを報告した。本報ではこの緑茶抽出物の有用成分や香気成分および水色について検証を行った。その結果、従来の熱水抽出よりも有用成分(アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、ケルセチン、サポニン、水溶性食物繊維)が高濃度で抽出され、機能性を有する緑茶飲料であることが分かった。また、テアニンから生成される(S)-3-アミノ-1-エチルグルタルイミド(環状テアニン)はACE阻害活性があり、緑茶の中でも玉露や碾茶に多いことも明らかにした。さらに、緑茶特有の香気成分および水色に関連するクロロフィルの増加も確認した。従って、亜臨界水抽出は従来よりも優れた香気と水色を示し、苦渋味抑制だけでなく新たな機能性を有する緑茶飲料の製造方法としての可能性を示唆した。
著者
市川 熹 大橋 浩輝 仲 真紀子 菊池 英明 堀内 靖雄 黒岩 眞吾
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.113-122, 2016 (Released:2016-07-07)

母語話者の話者交替時の重複タイミング現象である話者移行適格場(TRP)に注目し、日本語と英語について、それぞれの母語話者とその言語を十分に習得している非母語話者の実時間対話を分析した。両言語ともに、対話者が母語話者の組み合わせ以外ではTRPの制約が成立していなかった。このことは、非母語話者が発信している言語情報は話者交替の予告情報にはならず、言語情報の裏に必然的に存在するプロソディにあることを示唆している。また日本語母語話者の5歳児と6歳児と成人の対話を分析し、さらに先行研究結果を参考にしたところ、日本語母語のTRPの制約は5歳児ころまでに獲得されることが推察された。母語話者の話者交替タイミング制御のモデルを提案した。
著者
高橋 孝治
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.189-196, 2015 (Released:2015-12-25)

日本における教育は文系と理系に区分されている。この区分に対して今まで多くの疑義が示されてきた。本稿は文系の代表的な分野である法学と理系の代表的な分野である数学が実はその本質は同じものなのではないかというアプローチから、文理区分に対して疑義を示すものである。本稿は、文系思考とは何か、理系思考とは何か、学説対立の有無、数学者と法律家は歴史的に一体性などを見る。その結果、法学も数学も共に人間の造ったものであり、共に論理であるがゆえ解釈の違いがあることを明らかにする。さらに、その問題解決法にも類似が見られ、歴史的にも法律家と数学者は同一人物であることが多く、両者には非常に密接な関係にあることも述べる。これらのことから法学と数学は一体的なものであり、単に「文系と理系であるために異なる学問である」とすることは、法学の発展、数学の発展の双方にとっても望ましいこととは言えないと述べる。
著者
杉田 正明 西村 明展 加藤 公 福田 亜紀 松田 和道 須藤 啓広
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.31-34, 2013 (Released:2013-07-04)
参考文献数
14

高地で行われるスポーツ競技会に対し、平地と同様のパフォーマンスが発揮できるよう「高地順化」が求められる。しかし、高地にまとまった期間、滞在しトレーニングを行うには経済的、時間的にも負担が大きく、さらに高地でのトレーニングではトレーニングの強度や量の低下が心配される。2010年に開催されたワールドカップ南アフリカ大会のサッカー男子日本代表は、事前に平地(国内)で安静時に低酸素を吸入し、高地順化を促進する取り組みを行い、ある一定の成果を収めることができたとされている。しかし、特殊なツールを用いた安静時での低酸素吸入に関しては、不明な部分も多く、トレーニングの順序性を考える上で、安静時の低酸素吸入がその直後に行うトレーニングへ悪影響を及ぼす可能性が危惧されるところである。そこで、本研究の目的は、低酸素吸入後にオールアウトまでの運動を行い、通常環境(常酸素)で行った運動と比較して、生体への負担度や運動能力に影響が生じないかどうかを検討することである。8名の健常な男性を対象とし、安静時に低酸素吸入ツールを用いて低酸素吸入(SpO2 88~92 %;1時間のプログラム)をさせ、安静(常酸素)30分後にハンドエルゴメーターを用いて多段階漸増負荷法でトレーニングをさせた。また、低酸素吸入をしない環境(常酸素)でも同様のことを行わせた。各負荷での心拍数、血中乳酸濃度および主観的運動強度(RPE)の値は負荷が上がることに上昇したが、各測定項目の最大値も含めて低酸素吸入の有無による差は認められず、運動継続時間についても有意な差は認められなかった。本研究の結果より、平地で安静時に低酸素吸入をさせても、30分後の平地での通常の運動トレーニングには悪影響を及ぼさないと考えられた。
著者
羽鳥 剛史 二神 透
出版者
Society for Science and Technology
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.77-82, 2015

本研究では、自然災害に関わる想定の限界についての認識不足を「メタ無知」と呼称し、地震災害を対象として、人々がどのような想定意識を有し、その想定をどのように評価しているかを明らかにし、メタ無知の傾向を実証的に把握する。この目的の下、南海地震に関連する事柄・事象として①地震震度、②津波高さ、③建物倒壊、④建物焼失、⑤人的損失、⑥土木施設損壊、⑦ライフライン施設損壊を取り上げ、愛媛県八幡浜市の住民324名を対象に、これらの災害事象に関する想定意識とその想定を超える事態に対する意識について調査を実施した。その結果、地震災害の規模やそれによって生じる諸事態の可能性を過小に想定している人ほど、その想定の限界を認識していない傾向が確認された。以上の結果は、認知心理学におけるDunning=Kruger効果と整合的であり、地震災害に関わる想定意識の低い人は、それにも関わらず、自分の想定の低さを感知していないという意味において、メタ無知に陥っている可能性を示唆している。最後に、自然災害による被害を軽減する上で、本研究の結果が示唆する点について考察した。
著者
二宮 隆次 小野 浩幸 野田 博行
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.125-130, 2017 (Released:2018-01-06)

2002年から2010年までの8年6か月間に発刊された新聞記事から、年代別の産学連携活動の内容を読み取るために、分析対象記事に発刊年度の見出しを付して出現パターンの似通った語を探索し、さらに対応分析を行い活動の特徴についてテキストマイニング手法を用い分析した。その結果、①2002年度から2004年度のグループ(黎明期)、②2005年度から2007年度グループ(発展期)、③2008年度から2010年度のグループ(停滞期)の3グループに分類されることがわかった。黎明期では、産学連携の語群は主な活動の語に隣接し、大学、共同研究、教授、特許などの語と近接していることから活発に活動されていることが推測された。また、インキュベーション活動は、主な活動の語群から隔離していたが、施設入居のほか、運営の語が確認され、前向きな活動の実施が推測された。発展期では、インキュベーション活動は主な活動の語群内部に組み込まれ、起業家育成などが活発化していたと推測される。また、産学連携は主な活動の語群に隣接し、学生、製品、特許などの語が増えていることが見て取れた。さらに、ベンチャーキャピタルには、株式、公開、上場、キャピタル、銀行などがグループ化され活発化していたことが推測された。停滞期になると産学連携の語群は、主な活動の内部に組み込まれ、製品や商品開発活動が実施されていたが、インキュベーション活動やベンチャーキャピタルの活動はグループの語数が減少し、新たな起業活動や投資活動は停滞していたものと推測された。以上の結果は、政府による政策やグローバルな経済環境の変動などと一致し、わが国における産学連携活動は、これらに大きく影響していることが明らかになった。
著者
浦野 直人 岡井 公彦 相川 和也 田中 陽一郎 石田 真巳
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.131-136, 2013 (Released:2014-01-07)
参考文献数
14

多摩川は日本の代表的な都市河川である。近郊の生活廃水や産業排水は、水再生センターを経て再生水として流れ込んでおり、河川水の抗生物質濃度は日本の都市河川中でも高レベルにある。本研究は、多摩川流域における多剤耐性菌の蔓延度の解析を行った報告である。2010年7月に上流(青梅市)、2011年5月に中流(立川市)と下流(川崎市)から、多摩川の表層水と底泥を採集した。1~8種類の抗生物質を含む培地を用いて、採集サンプルから一般細菌および抗生物質耐性菌をスクリーニングした。多摩川の表層水中の一般細菌数と抗生物質耐性菌数は上流から中流・下流へと下るにつれて増大したが、底泥中の一般生菌数と耐性菌数は中流が最も多かった。細菌数は環境中の有機物濃度と相関があると考えられた。多剤耐性菌は、下流では2剤耐性菌が多く、中流では3剤耐性菌、上流では5~8剤耐性菌と川を遡るにつれて、多剤耐性能が高くなった。5-8剤耐性菌群にはBacteroidetes門、2~3剤耐性菌群にはFirmicutes門が多かった。また、上流の一般細菌中にBacteroidetes門、下流のそれにFirmicutes門が多かった。従って、上流に多く生息しているBacteroidetes門は多剤耐性能が高くなり易いと考えられた。各流域において、多剤耐性菌中に重篤な病原性細菌は発見されなかったが、肺炎桿菌、食中毒菌、敗血症菌、腸炎菌の存在が見とめられ、上流に多く発見された。
著者
渡部 真 宍戸 道明
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.41-46, 2016 (Released:2016-07-07)

人間の精神状態はスポーツや知的作業の結果に影響を与え、とくに高い集中状態のとき良好な結果を得ることができる。この集中力向上のアプローチのひとつにバイオフィードバック (Biofeedback: BF) が挙げられる。BFは、工学的な手法を用いて生体情報を利用者の視覚あるいは聴覚へとフィードバックし、心身の随意的制御を可能とする技法である。このとき、生体情報の呈示手法の違いにより集中力向上効果には差異が生じると考えられる。そこで本研究では、集中力向上を目的としたBFの装置の開発設計を行い、視覚と聴覚のBFにおける集中力の向上効果を比較した。とくに(1)BF前後における集中力の向上度、(2)継続的なBFによる平均集中力の推移について評価した。実験(1)では、被験者は12名とし呈示手法により6名ずつに分け、各被験者の安静時とBF時の平均集中力を比較した。その結果、視覚呈示法は6名中5名、聴覚呈示法は6名全員の集中力が向上した。一方、実験(2)では被験者3名とし、実験(1)と同様の実験を10日間継続して行った。その結果、両呈示手法にて集中力の向上が確認された。しかし、関心意欲の低下や、聴覚呈示法が困難であるために向上効果にばらつきが生じるなどの問題点が明らかとなった。以上の結果より、BFの効果は感覚器官の特性に依存しないことが明らかとなった。そのため、BFの装置の設計では呈示手法のデザインが重要であるといえる。
著者
杉田 正明 西村 明展 加藤 公 福田 亜紀 松田 和道 須藤 啓広
出版者
Society for Science and Technology
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.31-34, 2013

高地で行われるスポーツ競技会に対し、平地と同様のパフォーマンスが発揮できるよう「高地順化」が求められる。しかし、高地にまとまった期間、滞在しトレーニングを行うには経済的、時間的にも負担が大きく、さらに高地でのトレーニングではトレーニングの強度や量の低下が心配される。2010年に開催されたワールドカップ南アフリカ大会のサッカー男子日本代表は、事前に平地(国内)で安静時に低酸素を吸入し、高地順化を促進する取り組みを行い、ある一定の成果を収めることができたとされている。しかし、特殊なツールを用いた安静時での低酸素吸入に関しては、不明な部分も多く、トレーニングの順序性を考える上で、安静時の低酸素吸入がその直後に行うトレーニングへ悪影響を及ぼす可能性が危惧されるところである。そこで、本研究の目的は、低酸素吸入後にオールアウトまでの運動を行い、通常環境(常酸素)で行った運動と比較して、生体への負担度や運動能力に影響が生じないかどうかを検討することである。8名の健常な男性を対象とし、安静時に低酸素吸入ツールを用いて低酸素吸入(SpO2 88~92 %;1時間のプログラム)をさせ、安静(常酸素)30分後にハンドエルゴメーターを用いて多段階漸増負荷法でトレーニングをさせた。また、低酸素吸入をしない環境(常酸素)でも同様のことを行わせた。各負荷での心拍数、血中乳酸濃度および主観的運動強度(RPE)の値は負荷が上がることに上昇したが、各測定項目の最大値も含めて低酸素吸入の有無による差は認められず、運動継続時間についても有意な差は認められなかった。本研究の結果より、平地で安静時に低酸素吸入をさせても、30分後の平地での通常の運動トレーニングには悪影響を及ぼさないと考えられた。
著者
高橋 琢理 高原 健爾 足立 孝仁 小田部 貴子 若松 秀俊
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.133-138, 2012 (Released:2013-01-11)
参考文献数
10

本研究の目的は、社会的に大きな課題となっている大学生の基礎的学力低下に対する支援の指針として、基礎数学科目の学習状況から学生の理解の様子を推測し、その結果に基づいて支援を実施しようとするものである。福岡工業大学電気工学科で開講された2つの数学基礎科目で、学習自己点検を実施し、受講生に各自の学習について振り返らせて、その改善点に気づかせ、継続的な学習を促す取り組みを行ってきた。また、知識の定着度を確認するために、講義ごとの内容について小テストを実施した。ここでは、小テストの得点および期末試験の得点との相関と、一週間の学習時間と期末試験の得点の相関について検討した。その結果、小テスト得点と期末試験得点には有意な相関が見られたが、学習時間と期末試験の得点には明確な相関は示されなかった。一方で、多くの学生に、図形的な理解力が不足傾向であることがわかり、学習量が少ないだけでなく学習方法にも問題があることがわかった。