著者
矢島 道 矢島 新 松田 英子
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.214-225, 2013

本事例は,実際には色素斑が認められないにもかかわらず,顔のしみへのこだわりや関係妄想を主訴とする中年女性に対し,認知行動療法にて援助した面接過程の報告である。本事例のクライエントは,数年前に偶然夫と見知らぬ女性との写真を見つけたことをきっかけに,身体醜形障害と妄想性障害を併発(皮膚科医院メンタルクリニックの医師が診断)し,皮膚科受診を繰り返していた。カウンセラーは,クライエントと支持的な関係を作り,被害妄想や顔のしみへのこだわりに対しては自動思考記録表により現実に即した認知的再構成を促し,また,症状の遷延化に基づく二次的な不安や抑うつ症状に対しては行動の活性化を図るため週間活動記録表を導入した。クライエントの認知と行動の適応的変容を目的として,6か月間に12回の心理面接と面接終了1か月後に1回のフォローアップ面接を実施した。その結果,クライエントは現実と妄想の区別が可能になり,社会生活上のトラブルに対処できるようになった。同時に顔のしみへのこだわりも消失していった。心理アセスメントの結果からも,身体醜形障害と妄想性障害を合併する成人事例に対する認知行動療法の有用性が示唆された。

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編集者: タバコはマーダー
2017-12-29 00:03:40 の編集で削除されたか、リンク先が変更された可能性があります。

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