- 著者
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樫村 修生
南 和広
星 秋夫
- 出版者
- 日本生気象学会
- 雑誌
- 日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.4, pp.139-144, 2016
<p>本研究では,2020 年東京オリンピック開催期間と同期間の 2015 年において,暑熱曝露がもっと過酷であると想定されるマラソン選手の立場から,走行中に曝露される WBGT の計測を試みた.期間中にロードバイクに環境温度計を設置し,スタート地点からゴールまでをマラソン競技の走行スピードに相当する時速 20 km 時の WBGT を計測し,熱中症の危険性を評価した.平均 WBGT は 7 月 26 日が 30.4℃で 30℃を超え,次いで 8 月 4 日が 29.6℃,8 月 9 日が 27.0℃であった.また,平均乾球温度は,7 月 26 日が 36.9℃,8 月 4 日が 34.5℃,8 月 9 日が 32.4℃であった.平均 WBGT は,各地点においてロードバイク走行時の方が定点観測より平均 0.2±0.1℃(0.1 から 0.3℃)とわずかに低値であった.その結果,走行時に選手が曝露される WBGT は予想以上に高く,これにマラソン運動による 2 時間以上の体温上昇の負担も加わることから,熱中症を防ぎ良い成績を残すためには暑熱下トレーニングを実施し,十分な暑熱順化が必要になると思われる.この研究において,我々は 8:30 にスタート時間を設定したが,そのスタート時間をさらに早朝にシフトすることを検討する必要がある.さらに,我々はマラソンコースに多くのミストシャワーを設置し,ランナーの身体冷却を補助することが必要であると考える.</p>