著者
光村 実香
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】近年,医療技術の発展やQOLの観点から小児領域において医療ケアを受けながら在宅生活を送る患児・者が増加している。そのため訪問リハビリテーション(以下,訪問リハビリ)でもその必要性が重視されているが,多くの訪問リハビリに携わる療法士は小児未経験ゆえ,受け入れが困難な現状が問題視されている。そこで本研究は,訪問リハビリで療法士が患児とどのようにコミュニケーションをとりながらリハビリテーション(以下,リハビリ)を展開しているかを明らかにすることを目的として行った。【方法】対象者はスノーボールサンプリング法により抽出された小児訪問リハビリ経験年数半年~15年のPT3名(女性1名,男性2名),OT3名(女性1名,男性2名)である。調査期間は2013年10月~11月であった。小児の訪問リハビリを行うことになった経緯や小児訪問リハビリで大切にしていること,それまでの経験と異なり困ったことや工夫していることなどを質問項目としたインタビューガイドを作成し,半構造化面接を行った。面接時間は約60分,インタビュー内容はICレコーダーに録音し,インタビュー終了後,逐語録におこした。分析は,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて,概念やカテゴリーを生成し結果図を作成した。【倫理的配慮,説明と同意】研究説明書を用いて研究目的・方法,研究協力棄権での不利益を受けないこと,個人情報の保護,費用負担の有無等について説明を行い,同意書の署名をもって研究参加の承諾とした。本研究は金沢大学医学倫理審査委員会の承諾を得て実施した。【結果】【カテゴリー】7,「概念」13を抽出した。小児訪問リハビリに携わる前に病院・施設等で小児経験者か否かで小児訪問リハビリ介入初期時の気持ちが異なり,小児経験者はそれまでの病院・施設等での経験から「外来・施設でのリハビリの先」として児の生活に直結する関わりを意識して訪問リハビリに携わるが,小児未経験者は「小児未経験からの不安」な気持ちを持ちつつ訪問リハビリに携わる。しかし,在宅での生活を主体としたリハビリを展開するうちに,リハビリの中で獲得する機能が「家族にとって役立つこと」が重要で【訪問リハビリも生活の一部】と認識する。また学校を卒業した後の人生も視野に入れ「生活から将来像を想い」,他者とつながるためのコミュニケーションがちゃんととれるように意思・気持ちを伝える表出方法を確立することが必要であると強く感じる。そのためにまずは【つながる力を信じる】ことで,抱っこや姿勢の評価から児の「動ける身体部位に目星をつける」と同時に身近な話題をもとに「絶妙な間」と「問いかけを繰り返す」中から目星を付けた部位の反応が正確であるか,表出手段として的確かなどを見極める。この関わりを通し【つながる瞬間】を感じたら【つながる力を育む】ために「つながるチャンスの創設」として,生活の中で家族とテレビを見ながら,兄弟と一緒に遊びながら表出できる場面をリハビリの中で作り出す。また表出をより明確な反応として捉えるために道具やモノを利用して「つながる力を具現化」する。さらに「つながる方法を母になげかける」ことで児の一番身近な存在に表出方法やその特徴を伝え,効率的に他者へ伝達されるように仕向ける。この時に「母の体調やメンタル面を気にかける」ことで,母親から伝わる児への影響に配慮する。しかし,療法士を中心とした関わりでは訪問頻度や時間的制約により【訪問リハビリでできることの限界】を感じ,「誰でもできるやり方」を確立し,社会の一歩である「学校の先生との関わり」を通し【関わりの輪を広げる】。これにより,児自身が自発的に動く機会が増え【身体レベル,自己表現力アップ】が達成されていく。つまり,小児訪問リハビリで療法士が患児の表出を意味づけるプロセスとは,療法士が患児とその家族に寄り添いながら,社会とのつながりを紡ぎだすことであった。【考察】小児経験の有無により療法士の訪問リハビリ介入初期時に気持ちの差異があるも,訪問リハビリそのものが生活の一部であると認識すると同じプロセスを辿ることが分かった。また児の表出能力を療法士の経験や感覚だけではなく,身体機能から評価し,機能として獲得・向上させていくことが示された。小児訪問リハビリでは,生活はもとより将来像を見据えながら児の人生や社会とのつながりを意識しながら関わることが重要であると考える。【理学療法学研究としての意義】今後の在宅小児分野の発展と啓蒙,新人教育に役立て,生活支援系理学療法学の一助になる。

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