- 著者
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永田 智子
藤原 容子
山本 亜美
潮田 ひとみ
- 出版者
- 日本家庭科教育学会
- 雑誌
- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.59, 2016
【研究目的】<br> 家庭科の研究指定を受けている小学校の教員でさえ,ミシン指導に不安を抱えている(永田・鈴木2014).そこで永田ら(2015)は,将来の小学校教員である初等教員養成課程の学生に対し,ミシン使用の技能と指導の自信を高めるよう工夫した授業を実施した.その結果,ミシン使用の技能と指導の自信を一定程度高めることができたものの,改善の余地はあり,より詳細に検討する必要性が示唆された.そこで授業を改善し,その効果を詳細に検討することとした.<br> 【研究方法】<br> 研究対象は,2015年度にH大学で開講された小学校教諭の普通免許状授与のための必修科目「初等家庭科教育法」である.この科目を履修した学生(学部2~4年生,大学院生,計217名)のうち,被服実技に関する授業を3単位時間(1単位時間=90分)受講し,事前・事中・事後アンケートのすべてに回答した117人を分析の対象とした.また2014年度受講生の171人分を比較対象とした.<br> 2014年度は,第1校時には,基本的なミシン操作に重点をおくため,糸をつけずに紙を空縫いさせる練習をした.第2校時には,糸の通し方から説明をはじめ,糸調子や裏表がわかるようにするため,上糸と下糸で色の違う糸をつけて紙を縫う練習をした.その後,ポケットティッシュケース作りをした.ティッシュの出し口は,手縫いで並み縫いと返し縫いさせ,両端はミシンで直線縫いさせた.<br> 2015年度は2014年度に実施した授業の前に,手縫いを中心とする授業を1単位時間増やした.並み縫い・返し縫いに加えて,玉結び・玉どめ・ボタン付けを学習内容として新規に追加した.<br> また2015年度は事中・事後アンケートの質問項目を詳細にし,自信の程度を4件法(自信がある4~自信がない1)で尋ねた.<br> 【研究結果】<br> 2015年度は,ミシンに関する自分自身の技能について,授業後は,直線縫いの自信が大きく向上した.一方で,糸かけや糸調節については,事前よりは自信は高まったといえるものの,直線縫いほど大きくは高まらなかった.またミシン指導に対する自信についても同様の傾向であった.直線縫いに関しては,紙の空縫いから始めて,練習を繰り返したことが奏功したと思われる.<br> 手縫いに関して,2015年度は自分自身の技能についての自信は,授業後はどの項目も平均3点以上に高まった.これは2014年度に比べて授業時間を1単位時間分増やしたためと思われる.また,指導に対する自信についても,どの項目も高まったが,特にボタンつけについて3点以上に高まった.これは,ボタンのつけ方のみ児童用ビデオ教材を視聴させたことに起因していると考えられる.<br> 以上のことから,今回行った3単位時間の授業を通して,ミシン縫いと手縫いの技能およびその指導に対して自信が高まったといえる.特に,紙の空縫い,紙の直線縫い,布の直線縫いと回数を重ねたミシンの直線縫いは,技能への自信を高めることがわかった.また手縫いは,時間を増やしたこともあり,全般的に技能に対する自信が高まった.特に児童用ビデオ教材を用いて説明したボタンつけは指導に対する自信も高まったことがわかった.一方で,実際に体験しなかったミシンの糸かけや糸調節,手縫いの返し縫いについては指導の自信が低いままであった.<br> 今後,技能及びその指導に対して自信が低かった内容について効果的な指導法を検討し,さらなる授業改善を図りたい.<br>【引用文献】<br> 永田智子・鈴木千春(2014)小学校家庭科教育研究指定校の教員が抱える不安,日本家庭科教育学会第57大会(岡山大学)<br> 永田智子・藤原容子・潮田ひとみ(2015)ミシン使用の技能と指導の自信を高める初等教員養成課程『初等家庭科教育法』の工夫,日本家庭科教育学会第58大会(鳴門教育大学)