著者
潮田 ひとみ 仲西 正 中島 利誠
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.322-329, 2001-05-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
18
被引用文献数
2

湿度刺激とべたつき感や濡れ感などの湿潤感覚との関係を調べた.その結果, 温度感覚や圧迫感覚と同様に, 湿潤感覚も刺激に対して一定の変化をすることが明らかになった.湿潤感覚の変化は, Weber-Fechnerの法則よりもStevensのべき法則で評価した場合に, 直線性が高いことがわかった.更にこのStevensのべき法則から得られた湿潤感覚の指数と環境の水蒸気圧との間に一定の関係がみられた.湿潤感覚は, 環境湿度に伴って変化するが, 環境の相対湿度よりも環境の水蒸気圧によって制御されることが示唆された.
著者
今村 律子 赤松 純子 山田 由佳子 潮田 ひとみ 與倉 弘子 深沢 太香子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

<b>1</b><b>.目的<br></b> 家庭科衣生活内容において、「衣服の手入れ」は、どの校種においても大きな位置を占めている。小学校学習指導要領解説家庭編の「洗濯ができる」は、手洗いを中心とした洗濯の基本について学習する、を意味するが、手洗いという表現は、「洗濯機で洗える物を手で洗う」と洗濯の絵表示にある「洗濯機で洗えない物を手で洗う」の2種類の解釈が可能である。そのため、児童・生徒だけでなく大学生にもこの2種類の手洗いを混同している者が多いようである。本研究では、取り扱い絵表示の方法が、JISからISOの規格に変更されるこの時期に、被服学を専門とする立場から、洗濯学習に関する授業ポイント(内容)を整理し、小学校で重点的に取り上げる必要のある内容を含んだ洗濯学習の教材化について提案したい。<br><b>2</b><b>.方法<br></b><b> </b>現行の小学校家庭科教科書(2社)における衣生活内容「洗濯」を省察し、学習内容(ポイント)を被服管理学の視点から整理した。次に、関西6府県の附属小学校及び県庁所在地の市立小学校を対象に、洗濯の学習内容及び実習の実態についてアンケート調査したが、ここでは和歌山県の結果の一部を記す。<br><b>3</b><b>.結果及び考察<br></b>(1)洗濯学習に関する授業ポイント(内容)と調査項目<br> 小学校において学習すべき内容を6分類:A.準備、B.「洗う・絞る・干す」に関すること、C.洗剤、D.汚れ、E.後片付け、F.手入れの必要性、に整理することができた。 A.準備は、衣服の点検、表示の確認及び洗濯物・洗剤液の準備に細分できる。B.では、洗濯の工程、原理(水・洗剤・力)、洗い方・絞り方・干し方、C.は洗剤の種類・使い方・量、D.は、汚れの種類・性質、E.は、用具の片付け方とアイロン、F.は、着心地であり、43項目の内容に整理できた。<br>(2)和歌山市(54校中26校、回収率48%)における調査結果<br> 1)学習内容の実態<br> 整理した43項目中、学習させている項目は、平均24項目であった。9割以上の小学校で取り上げている項目は、絵表示で洗い方を確認すること、洗濯の工程は、「洗う&rarr;絞る&rarr;すすぐ・絞る・干す」であること、干す時に洗濯物の形を整えてしわを伸ばすこと、洗剤の量は必要以上使うと環境に良くないこと、の4項目であった。逆に学習実態が2割未満であったのは、洗濯機を使った時は洗濯機の中や周囲を拭くこと、泥などの固形汚れは乾燥させてブラシなどで落とすこと、汚れによって洗剤液と固形石けんを使い分けること、汚れのひどい部分には固形石けんを使うと良いこと、石けんは冷水に溶けにくいことの5項目であった。石けんに関わる内容があまり扱われていないことがわかった。<br>&nbsp;2)洗濯実習の実態<br> 学校現場で洗濯実習を実施している小学校は84%と多く、2時間で実習している学校が多かった。靴下やハンカチを洗っている場合が最も多かったが、学校行事で使用されている鉢巻きやたすきを利用している学校もあった。使用洗剤の形状と種類を混合した設問で複数回答を求めた結果、粉末洗剤にのみ○を付けた回答が多く見られた。教師が合成洗剤と石けんの区別をあまり意識していないことがわかった。洗い方は、もみ洗いとつまみ洗いの両方を教えている学校が60%と半数を超えていた。<br>(3)手洗い教材への提案<br> 実生活では、洗濯機による洗濯がほとんどである。小学校における手洗い洗濯では、洗濯の工程及び原理を取り上げることにより、将来の効率的な洗濯機利用につなげたい。アンケート調査では、粉末タイプの合成洗剤を実習に用いている学校が多かったが、もみ洗いに加えて手洗いの利点である部分洗い(つまみ洗い)を効果的に指導するために、固形石けんによる手洗いを提案したい。小学校家庭科教科書には、洗剤液の水量が10~20倍であることが記載されているが、浴比が物理的な力に関連することは洗濯機による洗浄で取り扱うことなので、固形石けんを用いることによって取り上げる必要がなくなると考える。このことは、少量の水による手洗い学習となり、防災時の洗濯などにも応用することができると考える。
著者
永田 智子 藤原 容子 山本 亜美 潮田 ひとみ
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

【研究目的】<br>&nbsp;&nbsp;家庭科の研究指定を受けている小学校の教員でさえ,ミシン指導に不安を抱えている(永田・鈴木2014).そこで永田ら(2015)は,将来の小学校教員である初等教員養成課程の学生に対し,ミシン使用の技能と指導の自信を高めるよう工夫した授業を実施した.その結果,ミシン使用の技能と指導の自信を一定程度高めることができたものの,改善の余地はあり,より詳細に検討する必要性が示唆された.そこで授業を改善し,その効果を詳細に検討することとした.<br>&nbsp;【研究方法】<br>&nbsp;&nbsp;研究対象は,2015年度にH大学で開講された小学校教諭の普通免許状授与のための必修科目「初等家庭科教育法」である.この科目を履修した学生(学部2~4年生,大学院生,計217名)のうち,被服実技に関する授業を3単位時間(1単位時間=90分)受講し,事前・事中・事後アンケートのすべてに回答した117人を分析の対象とした.また2014年度受講生の171人分を比較対象とした.<br>&nbsp;&nbsp;2014年度は,第1校時には,基本的なミシン操作に重点をおくため,糸をつけずに紙を空縫いさせる練習をした.第2校時には,糸の通し方から説明をはじめ,糸調子や裏表がわかるようにするため,上糸と下糸で色の違う糸をつけて紙を縫う練習をした.その後,ポケットティッシュケース作りをした.ティッシュの出し口は,手縫いで並み縫いと返し縫いさせ,両端はミシンで直線縫いさせた.<br>&nbsp;&nbsp;2015年度は2014年度に実施した授業の前に,手縫いを中心とする授業を1単位時間増やした.並み縫い・返し縫いに加えて,玉結び・玉どめ・ボタン付けを学習内容として新規に追加した.<br>&nbsp;&nbsp;また2015年度は事中・事後アンケートの質問項目を詳細にし,自信の程度を4件法(自信がある4~自信がない1)で尋ねた.<br> 【研究結果】<br>&nbsp;&nbsp;2015年度は,ミシンに関する自分自身の技能について,授業後は,直線縫いの自信が大きく向上した.一方で,糸かけや糸調節については,事前よりは自信は高まったといえるものの,直線縫いほど大きくは高まらなかった.またミシン指導に対する自信についても同様の傾向であった.直線縫いに関しては,紙の空縫いから始めて,練習を繰り返したことが奏功したと思われる.<br>&nbsp;&nbsp;手縫いに関して,2015年度は自分自身の技能についての自信は,授業後はどの項目も平均3点以上に高まった.これは2014年度に比べて授業時間を1単位時間分増やしたためと思われる.また,指導に対する自信についても,どの項目も高まったが,特にボタンつけについて3点以上に高まった.これは,ボタンのつけ方のみ児童用ビデオ教材を視聴させたことに起因していると考えられる.<br>&nbsp;&nbsp;以上のことから,今回行った3単位時間の授業を通して,ミシン縫いと手縫いの技能およびその指導に対して自信が高まったといえる.特に,紙の空縫い,紙の直線縫い,布の直線縫いと回数を重ねたミシンの直線縫いは,技能への自信を高めることがわかった.また手縫いは,時間を増やしたこともあり,全般的に技能に対する自信が高まった.特に児童用ビデオ教材を用いて説明したボタンつけは指導に対する自信も高まったことがわかった.一方で,実際に体験しなかったミシンの糸かけや糸調節,手縫いの返し縫いについては指導の自信が低いままであった.<br>&nbsp;&nbsp;今後,技能及びその指導に対して自信が低かった内容について効果的な指導法を検討し,さらなる授業改善を図りたい.<br>【引用文献】<br>&nbsp;&nbsp;永田智子・鈴木千春(2014)小学校家庭科教育研究指定校の教員が抱える不安,日本家庭科教育学会第57大会(岡山大学)<br>&nbsp;&nbsp;永田智子・藤原容子・潮田ひとみ(2015)ミシン使用の技能と指導の自信を高める初等教員養成課程『初等家庭科教育法』の工夫,日本家庭科教育学会第58大会(鳴門教育大学)
著者
永田 智子 藤原 容子 潮田 ひとみ
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, 2015

<b>【研究目的】</b>永田・鈴木(2014)の研究において,家庭科の研究指定を受けている小学校の教員でさえ,ミシン指導に不安を抱えていることが示された.現職研修も必要であるが,本来は教員養成課程の段階で自信を持ってミシン指導できる知識や技能を身に付けている必要がある.しかし家庭科の学習内容における教育学部生のつまずきで最も多いものが「ミシンの使い方(54.8%)」であり,その要因として,「機会が足りない」「方法・手順が複数ある」「教え方が不適切だった」「コツが分からない」「役割やしくみが分からない」「内容や作業が複雑だった」などが挙げられた(小林・伊藤2013).<br>&nbsp; そこで本研究では,将来の小学校教員である初等教員養成課程の学生に対し,ミシン使用の技能と指導の自信を高めるため,つまずきの要因をできるだけ排除した授業を工夫し,実践を通して効果を検証することとした.<br><b>【研究方法】</b>研究対象は,2014年度にH大学で開講された小学校教諭の普通免許状授与のための必修科目「初等家庭科教育法」である.この科目を履修した学生(学部2~4年生,大学院生,計217名)のうち,被服実技に関する授業を2単位時間(1単位時間=90分)受講し,事前および事後アンケートの両方に回答した171名(2年137人,3年4人,4年1人,大学院29人.男78人,女93人)を分析の対象とした.<br>&nbsp; 被服実技に関する授業では,第1校時には,縫い始めたい場所にミシン針をおろしてから押さえをおろすといったミシンの縫いはじめと縫い終わりの動作説明に重点をおくため,糸をつけずに紙を空縫いすることから始めた.第2校時には,糸の通し方から説明をはじめ,上糸と下糸の色をかえ,糸調子や裏表がわかるようにするなど,ミシンの仕組みや役割がわかるように,2段階で指導することとし,最終的に直線縫いでポケットティッシュケースを完成させる授業展開とした.<br><b>【研究結果】</b>事前アンケートより,小学校家庭科における手縫いやミシン縫いは多くの学生が経験していたが,中学,高校と校種が上がるにつれ減少していた(小学手縫い88.9%,小学ミシン88.3%,中学手縫い58.5%,中学ミシン57.3%,高校手縫い25.7%,高校ミシン26.9%).また,針と糸は自分のものを所有している学生は多いが(80.1%),自分のミシンを所有している学生は少なく(3.5%),家族所有もないとする学生も4分の1いた(26.9%).一方,家庭でミシンを作った物づくりは半数強が経験していた(52.6%).<br>&nbsp; 授業の理解度について「わかった」を4点,「わからなかった」を1点とした4件法で尋ねた,平均点を算出したところ,手縫い3.3点,ミシン3.2点と,おおむね授業は理解できたことがうかがえた.<br> &nbsp; 手縫いとミシン縫いの技術と指導の自信について,授業前後でのアンケート結果を比較した.手縫いは2.8点から2.8点,手縫い指導は2.1点から2.7点,ミシン縫いは2.5点から2.7点,ミシン指導は1.9点から2.5点へと向上した.事前において他の項目に比べて高かった手縫い以外の3項目が有意に高くなった(p<.01).以上のことから,今回行った授業において,手縫いおよびミシン縫いの技術と指導の自信が高まったことが検証された.しかし,授業後も自信がないとする学生が少なからずおり,さらなる授業の改善が求められる.<br><b>【引用文献】 </b><br>&nbsp; 小林歩,伊藤圭子(2013)家庭科における子どもの「つまずき」要因の検討一大学生の学習経験をもとに一,初等教育カリキュラム研究 (1), 69-79, 2013-03-31,広島大学大学院教育学研究科初等カリキュラム開発講座<br>&nbsp; 永田智子・鈴木千春(2014)小学校家庭科教育研究指定校の教員が抱える不安,日本家庭科教育学会第57大会(岡山大学)