著者
柳井 雅也 阿部 康久 小野寺 淳
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

Ⅰ はじめに中国の長春市おける日系自動車会社及び同部品産業の立地展開と当地における事業活動について調査を行った。対象となる会社は10社、うち現地で面接調査(2012年8月17日~23日)を行った会社はトヨタ自動車、IHI,一汽光洋、ワイテックの4社(全体の40%)である。ここではトヨタ自動車(以後、トヨタ)の実態を報告し、発表では残りの会社の分析を含めて報告する。Ⅱ トヨタの長春市進出の経緯中国では、外資系自動車会社は2法人までしか合弁会社が作れない。このことが、トヨタはじめ外資系自動車の、中国における立地と事業活動に制限と工夫が求められているといる。トヨタが天津自動車夏利と組んで本格的に中国進出を果たしたのは1995年のことである。さらに、四川旅行車製造廠(成都:小型バス「コースター」生産)と合弁(2000年)で四川トヨタを設立した。ここで第一汽車(以後、一汽)に資本参加してもらい四川一汽トヨタ(SFTM)を設立し、トヨタはもう1社と組めるようになった。そこでトヨタは広州汽車(2006年)と組むことになった。このやり取りの中で、一汽の本拠地、長春に進出(2002年)が決まった。2003年に一汽が長春一汽豊越(一汽資本100%)を設立して技術指導とV6エンジンの生産を開始した。2004年には一汽豊田(長春)発動機を設立した。長春一汽豊越は2005年、SFTMの分工場(SFTM長春豊越)となり、ランドクルーザー生産(約3万台/年)を始めた。また、プリウスも少量ながら生産している。さらに、新工場(2012年)を建てカローラ(年間10万台予定)の生産を計画している。Ⅲ 部品調達一方、天津で一汽はトヨタと組んで天津自動車夏利に経営参画し、夏利天津一汽トヨタとして規模拡大を続けた。日系関連企業の集積も進んでいる。このため、部品(日本からの輸入も含めて)は、天津経由または大連港(一部)経由で長春に送られている。この物流コストを吸収するには、付加価値の高いV6エンジンやランドクルーザーの生産を行うしか選択肢がない。例えば、ランドクルーザーの物流に関して、名古屋港から部品をコンテナ船で大連港に運び、仮通関後に荷降ろしを行って、陸路または列車で長春に運ぶ。ここで本通関を行う。もし、完成車を輸入しようとすれば関税が25%かかる。そのため、CKD(Complete KnockDown)生産方式で行わざるを得ない。Ⅳ 長春工場の課題長春工場の課題として、①労務コストが高い、②労働者の質の確保、③物流コストが高い、④東北三省の下請工場が無いことと、仮にあっても品質保証が難しい。こと等があげられる。トヨタの長春生産はコスト高になっている。そのジレンマを解決するため、日系の自動車部品企業の集積を徐々に図り、今後は東北三省市場(1億3000万人をマーケット、寒冷地仕様)に発展の余地を見出そうとしている。

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こんな論文どうですか? 中国長春市における日系自動車企業の立地展開:中国長春フィールド調査報告(5)(柳井 雅也ほか),2013 https://t.co/LPQYU8KXXR Ⅰ はじめに中国の長春市おける日系自動車会社及び同部品産業の立地展開と…

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