著者
中田 北斗 中山 翔太 水川 葉月 池中 良徳 石井 千尋 Yared B. YOHANNES 今内 覚 石塚 真由美
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.41, pp.P-187, 2014

ケニア共和国の首都ナイロビ市内の大規模ゴミ集積場・ダンドラ地域は、世界第二位の巨大・高密度スラム街であり、地域内の子供の半数はWHO基準(100 μg/kg)以上の血中Pb濃度であることが報告されているが、家畜の汚染や生体への曝露源に関する報告はない。本研究では、ダンドラおよび対照区として同国・ナクル地域に生息するヤギ、ヒツジ、ブタおよびウシの血中金属類(10元素)濃度およびPb安定同位体比をICP-MSにより、PCBsおよび有機塩素系農薬(OCPs)濃度をGC-MSとGC-ECDにより測定した。<br> その結果、全てのサンプルでCr, Mn, Ni, Cu, Zn, As, Mo, Agの高濃度蓄積は認められず、PCBsおよびOCPsは検出限界以下であった。Pb濃度はナクルに比べてダンドラで高い蓄積傾向を示し、ヤギおよびヒツジでは有意差が認められた。ブタの平均Pb濃度はダンドラ(2600 μg/kg, dry wt:dw)がナクル(73 μg/kg, dw)の約35倍の高値を示した。ダンドラのウシからは、ヘム合成に関与するアミノレブリン酸脱水酵素活性が低下するとされる値(100μg/kg)と同程度のPb濃度(91 μg/kg以上)が検出され、血液毒性等の中毒症状の蔓延が示唆された。Cd濃度の地域差および種差は認められなかったが、総じて高値(570±460 ng/kg, dw)を示し、ウシの摂食によるヒトのCd曝露が示唆された。Pb安定同位体比は地域および動物種により異なる傾向を示し、地域内に複数の曝露源があること、動物種により主要な曝露源が異なることが示唆された。<br> 本研究より、両地域に生息する家畜には高濃度のPb, Cdが蓄積し、特にPb汚染はダンドラで深刻なレベルであり、その曝露源が複数存在することが示唆された。家畜と生活環境を共にするヒトへの同様の汚染も強く示唆された。

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