著者
布施 未恵子
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.28, 2012

マハレに生息する野生チンパンジー(<i>Pan troglodytes schweinfurthii</i>)は,2歳になると授乳とともに堅いものを食べ始めることが明らかになっている.道具使用など特別な技術を伴う採食行動も,2歳ごろからみられるようになることが明らかになっている.ただし,モッピングという方法でオオアリを食べる行動はそれよりも若い年齢で観察されている.道具を使用せずに昆虫類を捕食する行動に,枯れ枝に営巣するアリ類の捕食行動があるが,このアリは枯れ枝を割らない限り食べることができない.また,枯れ枝にアリが営巣しているかどうかを瞬時に外見から判断するのが難しいため,どのような枯れ枝をアリが巣として利用しているか,といった枯れ枝に営巣するアリの生態を知ったうえでないと得ることができない食物である.アリの巣に直接アクセスすると幼虫や蛹などを効率よく得ることができるため,アダルトオスに比べて若いオスの方がこのアリ類の採食行動が頻繁であることが明らかにされている.よって,成長とともに採食品目を増やしていく子どもにとっても枯れ枝に営巣するアリは重要な食物であることが予想される.そこで,体のサイズや力に見合った枯れ枝選択能力や,アリが営巣した枯れ枝を見分ける能力といった,いくつかの要因が関係した採食行動におけるスキルがどのように発達していくのかを検討するため,枯れ枝営巣性アリ類の採食行動を性年齢クラス間で比較した.調査期間は2006年6月~8月,2006年10月~2007年4月の10ヶ月間で,マハレに生息するMグループを調査対象とし,総観察時間は554.6時間であった.今回は,枯れ枝営巣性アリ類の採食行動が開始される年齢と,1)枯れ枝の太さや種類の選択,2)枯れ枝営巣性アリの獲得率を性年齢クラスで比較した.これらの結果と,オオアリ釣り行動の発達に関する先行研究結果との比較から,マハレに生息するMグループのアリ類捕食行動全般の発達について考察する.

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