- 著者
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山元 得江
清野 紘典
岸本 康誉
西垣 正男
美馬 純一
- 出版者
- 日本霊長類学会
- 雑誌
- 霊長類研究 Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.29, 2013
ニホンザルの保護管理計画を策定・運用するにあたり,群れの生息状況は基礎的な情報として必要である.限られた予算のなかで費用対効果が高い群れ生息分布調査を実現するため,サル出没カレンダー調査(日誌形式アンケート調査)から,低コストで広域的に群れの生息分布を推定するプログラムを開発し,その実用性が検証されている(清野 他,2011).サル出没カレンダー調査は,既存の分布のみを把握するアンケート等と比較し,行動圏・個体数・加害レベル等が群れごとに推定できるため,群れ管理が必要とされるサルのモニタリングとしては得られる情報が多く,広域に群れが生息している地域では汎用性が高い方法と考えられる.<br> 福井県は,特定計画の策定に向け,サルの生息状況をモニタリングするため嶺南地域においてサル出没カレンダー調査を実施した.嶺南地域の 2市 5町約 850名に 1ヶ月間一斉にサルの出没を記録してもらい 1825件のサル出没情報を収集した.サル出没情報のうち,群れ情報のみを群れ判別プログラムで分析した後,一部の群れで実施したテレメトリー調査の結果で補正し, 36群の行動圏を推定した.推定された各群れの情報から,群れごとの加害レベルと個体数を推定した.加害レベルを 10段階で評価したところ,大半の群れは 6~ 8レベルにおさまり,個体数は約 1200~ 1600頭と推定された.<br> 福井県嶺南地域は,連続的な群れの生息分布が確認されている地域ではあったが,群れごとの行動圏と特性がはじめて体系的に明らかにされ,本法が管理計画に資する基礎情報の収集に適していることが示された.また,サル出没カレンダー調査から得られた情報を各地域スケールで GIS解析し,サルの出没や被害状況を可視化した.これらの情報は,被害対策を優先的・重点的に取り組む際の意思決定を支援する資料して活用されることが期待される.