- 著者
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田中 正之
伊藤 二三夫
佐々木 智子
長尾 充徳
- 出版者
- 日本霊長類学会
- 雑誌
- 霊長類研究 Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.30, pp.73-73, 2014
現在,日本国内で飼育されているゴリラの人口は,わずか25人である。過去50年以上にわたる飼育の歴史の中で,日本では死産を含めてもわずか14人しか子どもが生まれていないことからも明らかなように,繁殖の失敗が主な原因である。しかし,最近5年間で見ると,5人の赤ん坊が生まれており,改善傾向にある。京都市動物園ではこれまでに,独自に物理的および社会的面からゴリラの飼育環境の改善に取り組んできた。屋外運動場ではゴリラが食べても遊んでも,つぶしてもよいような条件下で多種・多数の植物を植え,生育させてきた。2008年に京都大学との間で野生動物保全に関する連携協定を結んでからは,ゴリラの健康管理の取り組みとして,心音を記録・分析するなどしてきた。<br>ニシゴリラについてより深く理解するために,2010年には京都大学の山極寿一教授の協力を得て,飼育担当者がガボン共和国の国立公園を訪ね,野生ニシローランドゴリラの生態とその生息地の植生を観察する機会を得た。そこで見た野生のゴリラは,日中の多くの時間を樹上で過ごしており,これまでの動物園におけるゴリラ展示方法との違いを痛感した。京都市動物園では新しいゴリラの飼育施設「ゴリラのおうち~樹林のすみか~」を造るにあたり,屋外・屋内に樹上空間を模した複雑な3次元構築物を設けた。来園者は,野生のゴリラのように頭上の空間を移動するゴリラを見ることができる。さらに,屋内には比較認知科学研究のためのタッチモニターを設置した勉強部屋も用意された。来園者はチンパンジー同様にゴリラの知性の展示を見ることもできる。新しい施設は本年4月27日にオープンする。発表では,新施設におけるゴリラの環境利用状況も報告する。