- 著者
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根田 克彦
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2013, 2013
イギリスは1990年代以降センターと呼称される小売商業地を核とする地区を設定して,それらを保護し,それ以外の場所,すなわちセンター外における大型店の立地を規制してきた.しかし,小都市のシティセンター,中規模以上の都市でもインナーシティの中小センターの衰退は止まることはなかった.本発表で対象とするノッティンガム市のハイソングリーン・タウンセンターは,ノッティンガム市のインナーシティに位置する小規模な周辺商業地のひとつである.ハイソングリーン・タウンセンターは,近年周辺に居住するエスニックマイノリティを対象とする商品とサービスを提供する商店街として注目された.このようなセンターは近隣の住民ばかりではなく,観光客を集めることもできる.本研究では,ハイソングリーン・タウンセンターのエスニック的な特徴と,それを支える周辺環境との関係を分析したい. ノッティンガム市の人口は266.988人(2001年)である.白人が84.9%,アジア人7.1%,黒人4.3%であり,白人人口がイングランドの平均(90.9%)に比べると低い.アジア人のなかで多いのはパキスタン人(全人口の3.6%.以下同様),次いでインド人(2.3%),中国人(0.6%),バングラディッシュ人(0.2%)である.パキスタン・バングラディッシュ人口が多いことからノッティンガム市ではムスリムが4.6%を占める(イングランド平均3.1%).さらに,市全体のムスリムの49.3%がシティセンターとそれに隣接する北部のインナーシティの4地区に集中する(図1).ハイソングリーン・タウンセンターは,それらムスリムが集中する地区の中心に位置する.これらの地区の一部は,1998年にNew Deal for Communities (NDC)政策が対象とする最も貧困な17地区の一つとして選定された. ハイソングリーン・タウンセンターには,バス停と路面電車(NET)の駅がある.核店舗であるAsdaスーパーストアは,1990年に市営住宅の再開発により立地し,広大な無料駐車場を有する.ハイソングリーン・ディストリクトセンター内にはハラル料理販売の食料品店やレストラン,サリーなどの民族衣装販売店,ポーランド・スペインレストランが立地する.