著者
坪井 塑太郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

集合住宅に付与される名称には,町名,近隣の駅名,公園名,名所・旧跡名を冠する「場所性」を持つもののほか,地形(丘・ヒルズなど)や自然構成要素(森林・河川名・山地名)の名称を冠することで良好な地域イメージを形成する事例がみられる.本研究では,既往の研究手法を援用しながら,河川や海などの物理的要素から,清新性や涼感など心理的要素を含む幅広い概念を有する「水」関連の名称を有する集合住宅(アパート・マンション)を対象として,東京都江戸川区を事例に,その立地特性を明らかにすることを目的とする.水関連の名称を冠する集合住宅は全332件確認され,このうち,親水公園の名称を冠する集合住宅(39件)の多くは,JR新小岩駅から徒歩15分圏域に位置する小松川境川親水公園においてみられた.これは,同地区が1970年代半ばより宅地開発が進められる中で1985年に竣工した同親水公園が,その空間的象徴として名称波及したものであると考えられる.また,河川に関連する名称を冠する集合住宅は,英語のほか,フランス語,ドイツ語,イタリア語,スペイン語で河川や河畔,小川を指す表現がみられ,区内ほぼ全域において分布していることが特徴となっている.また,最も多くの名称として用いられる「リバー」(163件)のうち,立地に起因する「リバーサイド」(76件)のほか,眺望・景観を想起させる「リバービュー」(3件)「リバースケイプ」(1件)「リバーウィンズ」(1件)などが特徴的な名称として用いられている.これは,地勢上,江戸川区が荒川,新中川,江戸川に隣接している地理的条件の他,「水」自体の持つ良好なイメージがその背景にあるものと考えられる.このほかにも東京湾に面した区南部地域を中心に,海の名称を冠する集合住宅が立地していることが明らかになった.今後は,マンション等の販売広告からイメージの表象に関する検討を行うほか,竣工年代や地形等を考慮し,定量的に立地や分布の特徴を把握することが課題である.

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