著者
宮岡 邦任 谷口 智雅 大八木 英夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

<b>1.はじめに</b>伊勢湾に面する三重県津市白塚海岸沿岸域における海底地下水湧出については,潮汐の変化に伴って湧出地点,淡水・海水の混合割合,水質,湧出量などに変化が生じることが確認されている(Miyaoka, 2007)。一方,白塚海岸の南側に隣接する河川の河口域において,潮汐の変化に伴う栄養塩の流出や伏流水の挙動の変化については明らかにされていない。本発表では,三重県津市を流れる志登茂川および安濃川の河口付近を対象に,潮汐の変化に伴う海底および河床からの地下水湧出形態の変化について調査を行った結果を報告する。<br><b>2.対象地域の概要</b> 研究対象地域を図1に示す。志登茂川および安濃川は,いずれも布引山地を源にする河川である。流域の土地利用形態は共通しており,中流から下流の沖積地の土地利用は,水田が広がり,いくつかの集落が点在している。海岸平野は市街地となっている。安濃川の流域内人口は,1970年以降増加傾向にある(三重県, 2003)。志登茂川流域においても同様の傾向がみられることから,これらの河川流域では,人間活動に由来する河川に流入する排水の量や質の変化が,沿岸域の水環境に影響を及ぼしていると考えられる。安濃川河口付近の河床堆積物は砂および小礫であるのに対し,志登茂川では砂および泥である。<br><b>3.研究方法</b> 志登茂川河口域において,電気伝導度分布調査を2012年7月と11月に実施した。いずれも中潮で7月は干潮,11月は満潮時に調査を実施した。また,2013年7月には,安濃川河口から約1km上流の約100mの区間において,電極間隔を4mに設定しシュランベルジャー法による比抵抗探査を,干潮から翌日の同時間帯の干潮にかけて3時間おきに実施した。また,志登茂川河口域では電気伝導度測定地点から数地点を選択し,安濃川では20m間隔で干潮時と満潮時に100mlの採水を行った。<br><b>4.結果および考察</b> 2012年7月および11月の志登茂川河口域における海底の電気伝導度分布調査では,顕著な淡水地下水の湧出が認められなかったが,河口部付近に周辺よりは値の低い35,000&mu;S/cm以下の範囲が認められたことから,この範囲で若干の淡水成分の流出が存在していることが示唆された。一方,北側の海岸付近には30,000&mu;S/cm以下を示す海域がみられた。このことから,河口付近では,陸地部とは異なり海水が陸側に侵入しやすく,沿岸付近で強制的に上向きのフラックスを得ることが少ないため,海底からの淡水流出が顕著に発生しないことが考えられた。2013年7月に実施した安濃川での比抵抗探査では,干潮時と満潮時で海域からの海水侵入の状態の違いから,河床からの湧出傾向にも変化が生じることが明らかとなった。<br><b>文献 </b><b></b>Miyaoka, K. (2007): Seasonal changes in the groundwater-seawater interaction and its relation to submarine groundwater discharge, Ise Bay, Japan. A New Focus on Groundwater-Seawater Interactions. IAHS Publ. 312, 68-74.三重県(2003):安濃川水系 河川整備計画.29p.<br><b>付記</b> 本研究は科研費 基盤C(課題番号23501240 代表:宮岡邦任)の一部である。

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