著者
香川 雄一 岡島 早希
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

1.はじめに<b> </b>航空輸送は迅速性に優れた輸送手段であるが、航空機が発着する空港周辺地域においては、航空機による騒音問題が発生している。我が国では、大阪国際空港や米軍基地に関する騒音訴訟が周辺住民によって提起されてきた。こうした地域を対象とした研究は数多くみられる一方で、航空機騒音が発生しながら、これまであまり注目されてこなかった地域も存在している。 現在、航空機の低騒音化が進み、発生源対策は大きな改善がみられる。そのため、今後は住宅防音工事をはじめとした空港周辺対策の重要性が増していくと考えられる。そこで本研究では、名古屋飛行場周辺住民による航空機騒音に対する意識を明らかにし、今後の空港周辺対策における課題を明らかにしていく。本研究の意義は、空港周辺自治体の参考となることと航空機騒音問題の解決に寄与することである。<br>2.研究方法 まず、予備調査により把握した全国の空港周辺自治体に対し、空港周辺対策の実態等に関するアンケート調査を実施した。次に、名古屋飛行場の周辺住民を対象としたアンケート調査を行った。調査票は、騒音対策区域に含まれる区域内の地域と、それ以外の区域外の地域に分けて配布した。この調査結果をもとに、クロス集計やGISを用いた分析を行った。その結果から、名古屋飛行場に関する空港周辺対策の改善策を提案する。<br>3.結果及び考察 全国の空港周辺自治体を対象としたアンケート調査では、航空機騒音に係る環境基準の達成状況は改善傾向であることがわかった。しかし、航空自衛隊基地の周辺など、一部の地域では騒音に対する苦情も寄せられており、地域差がうかがえた。名古屋飛行場の周辺住民を対象に行ったアンケート調査結果をクロス集計したところ、区域内外とも、航空機騒音に対してうるさいと感じる住民が多く存在することを把握した。中部国際空港開設に伴う、2005年の県営化によって民間機の発着数が減少した後も、主に自衛隊機による騒音被害が発生していることがうかがえた。また、航空機騒音への問題意識に関してGISを用いて地図化したところ、飛行ルート直下の地域では区域内だけでなく区域外においても騒音への被害意識が高いことがわかった。住宅防音工事等の助成を受けるには、対象区域や築年数などの条件を満たさなければならないため、施工を断念する住民も存在する。さらに、施工後の修理に困っている住民もおり、継続的な対応の充実が望まれる。空港周辺対策に関する認知度は、全体的にかなり高い結果となったが、若い世代や居住年数が短い住民を中心にやや低い傾向をみせた。本調査の結果により、名古屋飛行場の空港周辺対策の改善策として、防音工事等の助成を受けられる条件の緩和と工事後も補助の充実が望まれる。県営化によって対象区域が縮小されたが、現在においても住宅防音工事をはじめとする空港周辺対策の必要は高いと推測される。また、空港周辺対策に関して周知を行い、住民の関心を高めることも必要である。空港周辺地域においては経済的な利点も存在するが、航空機騒音に悩む住民が存在することを忘れてはならない。今後も、地域住民と空港が共生していくための対策が必要である。

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