- 著者
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丸本 美紀
福岡 義隆
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2014, 2014
1.はじめに2011年の東北大震災以降、古地震や古津波による災害の復元が重要な課題とみなされている。しかし、日本は地震だけでなく大雨、洪水または干ばつなどの気候災害にもしばしば見舞われてきた。地震と同じように、多くの気候災害の記述が古文書等に残されている。さらに、昨今、地球温暖化による気候災害が深刻な問題となっている。過去においても、西暦800年から1200年にかけて「中世温暖化」または「Medieval Climate Anomaly (MCA)」と呼ばれる世界的に顕著な温暖化があったことが知られている。本研究では、このMCAを含む気候災害の特性を時空間変化の観点から明らかにすることを試みた。2.研究方法はじめに、気候災害の時間変化を明らかにするため、筆者らは日本気象史料、日本旱魃霖雨史料、日本の天災地変、奈良県気象災害史、京都気象災害史料の5つの史料から西暦601年~1200年の古気候災害のデータを収集し、データベースを作成した。このデータベースに基づいて、気象災害が種類に関して9つのグループ、すなわち深刻な被害となりうる暴風雨、洪水、霖雨、雷雨、旋風、干ばつ、雹、大雪、霜に分類した。地域に関しては、6つのグループ、すなわちこの時代に多くの記録が残っている奈良、京都、近畿地方、全国、その他、不明に分類した。最後にこれらの結果を時空間変化の観点から考察し、奈良と京都の比較を行った。3.研究結果図1は西暦601年~1200年の気候災害と北川による年輪から推定された気温偏差の10年ごとの経年変化を示したものである。気候災害の数は西暦860年以降急激に増加しており、推定気温も気候災害とほぼ平行して推移している。両者の相関係数は0.35であった。古記録から分析された気候災害の地域は800年ごろに変化し、一方、気候災害の種類は850年ごろに変化した。西暦601年から800年に気候災害が発生した割合は奈良が33.1%であったが、西暦801年から1200年では京都の割合が57.9%を占めた。干ばつは西暦800年までに最も多かった気候災害であるが、しかし800年以降だんだんと減少している。その代わりに、暴風雨と雷雨が800年以降増加している。奈良の気候災害の種類は発生頻度が多い順に、雷雨(24.8%)、干ばつ(23.8%)、暴風雨(20.8%)であったのに対し、京都で発生した気候災害の種類は多い順に、暴風雨(27.0%)、雷雨(22.8%)、洪水(18.1%)であった。参考文献Maejima Ikuo and Tagami Yoshio (1986): Climatic change duaring historical times in Japan –reconstruction from climatic hazard records. Geographical reports of Tokyo Metropolitan University, 21,157-171<b>.</b>