著者
金丸 千沙子 竹藤 順子 片桐 龍一 河野 健太 竹本 竜志 三浦 幸仁 池上 仁 千葉 修一
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.42, pp.P-233, 2015

【背景・目的】近年、イヌをはじめとする社会生活を営む動物は、動物福祉向上の観点から複数頭で群飼育することが求められるようになっており、より生態に近い飼育環境へ改善することで、精度・再現性の高い実験となることが期待されている。一方で、群飼育下での安全性試験の実施は、動物同士の接触、干渉などが毒性評価へ影響を及ぼす懸念があるほか、飼育器材の改良も必要となり、わが国におけるGLP試験での実施例はまだ多くない。今回我々は、群飼育下でイヌにおける13週間反復投与試験を実施し、良好な成績を得ると共に、今後の課題を抽出したので紹介する。【方法】入手時8~9カ月齢のビーグル犬を2~3頭のグループで飼育した。通常の個別飼育ケージ(W 900×D 900×H 1590 mm)の両側面を開閉式に改良し、複数ケージを連結できるものを使用した。単飼育は投与、給餌、尿検査、心電図検査並びに獣医学的ケアの観点から必要と判断された場合に限定し、その他の期間は群飼育とした。群分けでは、馴化期間中のグループは考慮せず、個別の体重値に基づく層別割付を行った。層別割付後に同一投与群内で2~3匹の新たなグループを作成し、相性確認で問題がないことが確認された場合にグループ成立とした。【結果】群分けにおいて、新たなグループは全て成立した。各種検査項目には単飼育時との明らかな差は認められなかった。ケージ症状の観察では、個体の特定の可否を明確に記録することで、単飼育時との検出感度の差を最小限にとどめることができた。なお、雄の1グループで投与9週目に闘争による負傷が発生し、それ以降は単飼育としたが、その他のグループでは問題は認められなかった。【結論】本実験条件下では、既に単飼育で実施した短期間投与の試験成績と大きな齟齬は生じなかった。今後、住環境の改善など更なる動物実験における福祉向上を目指すと共に、リソースの有効活用も追求していく必要があると考えられる。

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