著者
相原 正博 西崎 香苗 廣瀬 昇 久津間 智允 池上 仁志
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第29回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.234, 2010 (Released:2010-10-12)

【目的】変形性膝関節症(以下膝OA)の手術方法である人工膝関節全置換術(以下TKA)は,除痛及び下肢アライメントの矯正による他関節の負担軽減など その有効性は高い.横山らは,膝OA患者の立位時の重心動揺検査測定値が増加する傾向にあることを報告している.今回我々は,TKAを施行した患者の術 前・術後において下肢荷重検査を実施し,手術施行によるFTAの変化が重心動揺に及ぼす影響を検討した. 【方法】対象は膝OAと診断された手術患者から12名を無作為抽出し,本研究の同意を得た上で,術前・術後1ヶ月・術後3ヵ月以降の各時期に下肢荷重検査 を実施した.測定方法は,キネトグラビレコーダ(アニマ社製G-7100)を用い,静的立位姿勢の左右下肢別に計測した.測定時間は30秒間,測定回数は 1回とした.測定項目は下肢荷重検査から重心動揺検査の総軌跡長・単位軌跡長などとした.FTAはX線画像より計測し,手術前後のFTA変化量が10°未 満(n=5),10°以上の群(n=5),20°以上の群(n=2)の3群に分け比較検討した.統計学的解析にはt-検定を使用した. 【結果】総軌跡長(cm)の結果では術前と術後1ヶ月の差が10°未満群では-4.01±3.65,10°以上の群-2.43±6.43,20°以上の群 では-27.21±14.88であり,10°未満群と10°以上群に有意差はなかったが,20°以上群では10°未満群,10°以上と比較し,それぞれ有 意差(p=0.02,p=0.02)が生じていた.単位軌跡長(cm/秒)の結果では術前と術後1ヶ月の差が10°未満群では-0.13±0.12, 10°以上の群-0.08±0.22,20°以上の群では-0.91±0.50であり,10°未満群と10°以上群に有意差はなかったが, 20°以上群では10°未満群,10°以上と比較し,それぞれ有意差(p=0.02,p=0.02)が生じていた. 【考察】本研究結果において,手術によりFTAが著明に変化(20°以上)した群では,FTAの変化の少ない群(20°未満)と比較し,術後の総軌跡長と 単位軌跡長において増大傾向がみられた.このことはFTAの著明な変化は立位重心動揺に影響を与えていることを示している.よってTKAの術後理学療法を 行う際には,FTAの術前後変化に留意し,高度にFTAが変化した症例においては,重心動揺が増加している可能性が高く,早期理学療法時には重心動揺計などを用い,適切な立位バランスを評価することが必要であり,この点に着目して理学療法を実施することは歩行・立位バランスの早期改善に有効であるとことが 示唆された.
著者
金丸 千沙子 竹藤 順子 片桐 龍一 河野 健太 竹本 竜志 三浦 幸仁 池上 仁 千葉 修一
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.42, pp.P-233, 2015

【背景・目的】近年、イヌをはじめとする社会生活を営む動物は、動物福祉向上の観点から複数頭で群飼育することが求められるようになっており、より生態に近い飼育環境へ改善することで、精度・再現性の高い実験となることが期待されている。一方で、群飼育下での安全性試験の実施は、動物同士の接触、干渉などが毒性評価へ影響を及ぼす懸念があるほか、飼育器材の改良も必要となり、わが国におけるGLP試験での実施例はまだ多くない。今回我々は、群飼育下でイヌにおける13週間反復投与試験を実施し、良好な成績を得ると共に、今後の課題を抽出したので紹介する。【方法】入手時8~9カ月齢のビーグル犬を2~3頭のグループで飼育した。通常の個別飼育ケージ(W 900×D 900×H 1590 mm)の両側面を開閉式に改良し、複数ケージを連結できるものを使用した。単飼育は投与、給餌、尿検査、心電図検査並びに獣医学的ケアの観点から必要と判断された場合に限定し、その他の期間は群飼育とした。群分けでは、馴化期間中のグループは考慮せず、個別の体重値に基づく層別割付を行った。層別割付後に同一投与群内で2~3匹の新たなグループを作成し、相性確認で問題がないことが確認された場合にグループ成立とした。【結果】群分けにおいて、新たなグループは全て成立した。各種検査項目には単飼育時との明らかな差は認められなかった。ケージ症状の観察では、個体の特定の可否を明確に記録することで、単飼育時との検出感度の差を最小限にとどめることができた。なお、雄の1グループで投与9週目に闘争による負傷が発生し、それ以降は単飼育としたが、その他のグループでは問題は認められなかった。【結論】本実験条件下では、既に単飼育で実施した短期間投与の試験成績と大きな齟齬は生じなかった。今後、住環境の改善など更なる動物実験における福祉向上を目指すと共に、リソースの有効活用も追求していく必要があると考えられる。
著者
田中 博之 小野 達也 西﨑 香苗 池上 仁志
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.O-059, 2020 (Released:2020-01-01)

【はじめに】健常者の立ち上がり動作には股関節が100° 以上屈曲することが報告されており、THA等により股屈曲制限が生じている患者では、健常と異なるパターンで立ち上がることが推察される。本研究では、股屈曲制限下での立ち上がり動作の筋電図学的特徴を明らかにすることを目的とした。【対象と方法】対象は健常男性10名(平均年齢26.8±4.1歳)とした。運動課題は、下腿長と同じ高さの座面からの立ち上がり動作とし、股関節装具による股屈曲90°制限下での立ち上がり(以下制限あり群)・装具なしの立ち上がり(以下制限なし群)を各3回施行した。左前脛骨筋、中殿筋、大殿筋、腹直筋等に電極を貼付し、課題遂行時の筋活動および徒手筋力測定に準拠した最大随意収縮(以下:MVC)を表面筋電図計で記録した。立ち上がり動作を3相に分け、MVCより各相の%MVCを算出した。 統計は対応のあるt検定を用いた(p<0.05)。【結果】第1相中殿筋は制限あり群2.8±1.6%制限なし群 1.84±1.0%(p=0.002),大殿筋は制限あり群2.6±1.8%制限なし群2.1±1.3%(p=0.04)であり、他筋に有意差はなかった。第2相は中殿筋が制限あり群1.8±1.0%制限なし群1.3±0.8%(p=0.03),前脛骨筋は制限あり群6.4± 4.3%制限なし群4.1±2.1%(p=0.02)であった。第3相に有意差はなかった。【考察】本検討より、股屈曲制限は、立ち上がり第1 〜2 相に影響することが明らかとなった。立ち上がり動作の初期相で生じる体幹前傾は下肢関節モーメントに影響するため立ち上がり動作において重要な要素であることが知られている。股屈曲制限下での立ち上がりは体幹前傾が減じるため、第1相では大殿筋、中殿筋による股関節外旋、第2相では前脛骨筋による下腿前傾を増大させて身体重心の前方移動を行ったと推察された。
著者
遠藤 健司 駒形 正志 西山 誠 池上 仁志 田中 恵 山本 謙吾
出版者
The Japanese Society of Lumbar Spine Disorders
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.115-120, 2005

画像診断にて原因不明な腰・下肢痛の中には,脊髄終糸の過緊張によって発症するものも存在する.今回,25例のTight filum terminale(以下TFT)に対して,終糸の切離を行った症例の術後経過を検討した.TFTの診断は,腰痛または下肢痛,膀胱直腸障害,脊椎不橈性,非髄節性神経障害,TFT誘発テストにより臨床診断を行った.手術は,終糸切離をS1高位で行った.術後の症状は全症例中,腰下肢痛の改善が96%に,筋力の回復が68%,知覚異常の改善が68%,膀胱直腸障害の改善は79%,体幹前屈制限の改善は80%で認められた.疼痛の経過は,VAS(Visual Analog Scale)で評価したが,術前の最大疼痛を10とすると,術後平均は3.3(0~7)であった.TFTは腰椎椎間板ヘルニアと鑑別を要するが,膀胱直腸障害の存在,MRI所見,誘発テストが陽性であることが異なる点である.画像診断で神経圧迫症状のない腰痛,下肢痛の鑑別診断としてtight filum terminaleを考慮する必要があると考える.
著者
遠藤 健司 駒形 正志 西山 誠 池上 仁志 田中 恵 山本 謙吾
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.115-120, 2005 (Released:2007-12-14)
参考文献数
15

画像診断にて原因不明な腰・下肢痛の中には,脊髄終糸の過緊張によって発症するものも存在する.今回,25例のTight filum terminale(以下TFT)に対して,終糸の切離を行った症例の術後経過を検討した.TFTの診断は,腰痛または下肢痛,膀胱直腸障害,脊椎不橈性,非髄節性神経障害,TFT誘発テストにより臨床診断を行った.手術は,終糸切離をS1高位で行った.術後の症状は全症例中,腰下肢痛の改善が96%に,筋力の回復が68%,知覚異常の改善が68%,膀胱直腸障害の改善は79%,体幹前屈制限の改善は80%で認められた.疼痛の経過は,VAS(Visual Analog Scale)で評価したが,術前の最大疼痛を10とすると,術後平均は3.3(0~7)であった.TFTは腰椎椎間板ヘルニアと鑑別を要するが,膀胱直腸障害の存在,MRI所見,誘発テストが陽性であることが異なる点である.画像診断で神経圧迫症状のない腰痛,下肢痛の鑑別診断としてtight filum terminaleを考慮する必要があると考える.