- 著者
-
山村 明子
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.67, 2015
<b>目的</b> 従来の主婦論は社会学を基盤として、主婦の存在意義や役割などについての研究なされてきた。しかし、その服飾を研究対象とすることで、主婦・母親に求めた理想的な姿を検証する。近代に日本の家族観、家庭観に強く影響を及ぼしたイギリス社会の家庭生活、主婦像についてその服飾行動から明らかにする。本発表では家事行為と主婦の装いについて、検討する。<br><b>方法</b> 主な資料にイギリスで発行された<i>The Lady’s Realm</i>などを利用する。同誌は1896年に創刊された女性向け月刊誌で、連載小説、家庭生活一般、職業、ファッションといった、当時の女性の関心事を幅広く網羅している。<i></i><br><b>結果</b> もてなしを司る女主人の役割はその家庭の文化度を測る指標であり、主婦の装いは外部に向けて教養や社交術を表明した。20世紀初頭には主婦の役割が家庭内において変化した。主婦の生活スタイルの変容は服飾行動にも関わり、ファッション記事には家庭内での装いとして、Housefrockなどが繰り返し登場する。また、20世紀初頭は家事奉公人の減少や家庭生活技術の発展に伴い、主婦が家事労働に携わる機会が増加、または家事労働の内容が変化した。資料には衣食住の技術や知識の紹介、またはそれらを学ぶスクールを取材した記事が登場し、家事労働の位置づけの変化を認めることができる。ヴィクトリア朝の女性家事奉公人の表象となっていたエプロン姿は主婦=女主人のものへと変化をとげた。