- 著者
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中嶋 彩乃
古屋 正貴
- 出版者
- 宝石学会(日本)
- 雑誌
- 宝石学会(日本)講演会要旨
- 巻号頁・発行日
- vol.37, 2015
近年、ファセットカットされたビーズがジュエリーのチェーンの代わりに使われ始めているが、それに伴い新しい問題も起きている。下の写真のブラックスピネルのビーズでは、ペンダントのバチカンに当たる部分が摩耗されて他の部分に比べて明らかに輝きが弱くなっている。このような地金とビーズの摩耗の特徴と対策を調べるため、各種摩耗に関する実験を行った。<br> 実験にはブラックダイアモンド、ブラックスピネル、ブラックカルセドニーのビーズを用意した。1)まず、地金側の傷を調べるため、Pt900(割金Pd10%)、K18金(割金Ag15%, Cu10%)、K18ホワイトゴールド(割金Ag11%, Pd8%,Cu4%,Zn2%)および銀(SV925, 割金Cu7.5%)の板と擦り合わせた。続いて石側の傷を調べるため、2)金、および銀で出来た半円形の棒と擦り合わせを行った。3)また共擦りを調べるためビーズの連を平行に束ねた状態と編み込んだ状態で擦り合わせを行った。同じ条件下で比較するため、電動サンダー(毎分13000回転)を用い、機械の自重(約1kg)で決まった時間擦り合わせた。<br> 1)の地金の板との擦り合わせ実験では、地金側にダイアモンド>スピネルの順に深い傷がつき、カルセドニーではほぼ傷はつかなかった。地金はSV925≒Pt900 >K18ホワイト>K18の順に傷がついた。石側はカルセドニーを含め、あまり傷は生じなかった。<br> 2)の地金の棒との擦り合わせ実験では、金、銀ともにダイアモンドには目立った傷が見られず、ブラックスピネルではエッジの摩耗が見られ、カルセドニーではわずかな面傷が見られた。硬度の高いものは傷はつきにくいのだが、スピネルは地金より硬度は高いにもかかわらず、当たり傷としてエッジの摩耗が生じたためと解釈される。また、エッジの摩耗は硬度の低いカルセドニーでは目立たなかったが、これは使用したサンプルが元よりあまりエッジを立てないカットが行われていたため、目立たなかったものと考えられる。<br> 3)の共擦りを調べる実験では編み込んだものでスピネルは激しいエッジの摩耗、面傷が見られ、カルセドニーでは面傷が見られ、ダイアモンドではあまり傷は目立たなかった。また、平行にしたものではどれも比較的傷は少なかった。これも先のものと同じ理由と考えられるが、スピネルの摩耗が特に激しかった。<br> これらの対策としては、地金とビーズがあまり当たらないデザインにすること、ビーズ同士に力がかからないデザインにすること、エッジをあまり立てないカットを用いることなどが考えられる。<br>謝辞:株式会社八紘商会(地金試料提供)